ジェーン・スー グラミー賞受賞で歓喜の声を上げたマイリー・サイラス。アメリカのティーンが夢中になる女性アーティストは、自分の足で前に進む意味を教えてくれる
◆自分の足で前に進む意味 以降、マイリーは自立した女性の姿をますます楽曲で寿ぐようになった。次のアルバムでは「私は誰にも属さない あなたに愛される必要はない」と歌い、最新アルバム『エンドレス・サマー・ヴァケーション』の先行シングル曲「フラワーズ」では、「私は自分に花を買うことができる あなたよりも私を愛することができる」と歌った。なんとシンプルで力強い言葉だろう。この曲で、ようやくマイリーにグラミー賞が巡ってきた。彼女は31歳になっていた。なにを言われても、自分を信じて続けていくことの重要性を、まざまざと見せつけられた。 授賞式では自身の名付け親であるカントリーシンガーのドリー・パートンをイメージしたグラマラスなビッグヘアと、鍛え抜いた肉体をキラキラのヴィンテージドレスに包み熱唱した。肉体からも歌唱からも、日頃から類稀なる努力を続けていることがわかる。そのプロ意識とは裏腹に、スピーチは愛嬌にあふれ、生来の親しみやすさを感じさせるものだった。私生活では結婚・離婚も経験したが、それすら糧にし、欲しいものをすべて手に入れた女の輝きを存分に放っていた。 マイリー・サイラス、テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ。アメリカのティーンが夢中になる女性アーティストは、傷も悲しみもすべて受容し、自分の足で前に進む意味を、楽曲を通して教えてくれる。説教臭さはまるでない。彼女たちの楽曲を愛し育ってきたティーンが、将来どんな大人になるのか楽しみで仕方がない。
ジェーン・スー
【関連記事】
- ジェーン・スー 大雪が降ると私は必ず、当時付き合っていた男を思い出す。転ばないように手をつなぎ、大はしゃぎしながら大雪の東京を2人で見た夜、私は底抜けに幸せだった
- ジェーン・スー 40歳過ぎから体調が優れない状態が日常に。「疲労」で済んでいたものが「罹患」とセットになり、「おまえが思っているほど強くはない」と体が逐一知らせてくる。私は弱体化している
- ジェーン・スー 誰かがSNSで幸せの数を数え出したら私の<違和感センサー>が反応する。「むしろ幸せを感じられていないのでは」と邪推する私はどこかで自分の違和感を絶対的に信用している
- ジェーン・スー 不安を抱えながらかかりつけ医に任せたインプラントがおかしい。絶対におかしいのに、私は流れに逆らえなかった
- ジェーン・スー 目をきょろきょろさせながら担当医は「大丈夫です」と言った。正直に話してくれない人に頭蓋骨を任せるわけにはいかない