「お前じゃ使えない」「税金泥棒」は日常的、電話の半数は「罵声」の部署も…都内42区市町でカスハラ被害
東京都がカスタマーハラスメントについて都内全62区市町村を対象に行ったアンケート調査で、7割の42区市町が被害を訴えたことがわかった。来年4月に施行される都のカスハラ防止条例は自治体も対象で、都は公務員の被害対策も進める方針だ。(上田惇史) 【表】一目でわかる…カスハラは業種ごとに特徴がある
調査は今年7~8月、区市町村の人事担当者に対して行った。「職員へのカスハラが発生しているか」の問いには、20区18市4町が「はい」と回答。このうち、誰からのカスハラかを自由記述で答えてもらったところ、「住民」が多く、「契約相手の業者」「議員」もあった。
カスハラの発生を否定したのは3市5村で、残る3区5市1町3村は「わからない」と回答した。カスハラの実態調査を行ったことがあるのは7区6市1町と全体の2割強にとどまり、都の担当者は「多くの自治体で被害を把握しきれていない可能性がある」とみる。
カスハラ防止の取り組みを実施しているのは5割強の14区19市2町。具体策として「職員の名札を名字のみに変更」「対応マニュアルを作成」「事例を庁内で共有」などを行っていた。
一方、取り組む中で困っていることとして、「カスハラの定義づけが難しい」「相手が市民で行政サービスを受ける権利があり、割り切った対応をしづらい」などの意見が上がった。
今後、カスハラ対策に取り組む予定があるのは7割強の22区19市3町1村に上った。名札変更のほか、ポスター掲示による住民啓発、職員研修、通話録音機の設置などを行うという。
昭島市は今年3月、市役所本庁舎で、各部署にかかってくる外線電話の録音を始めた。被害の把握や抑止効果を期待する。来年2月からは名札を名字のみに変更する予定で、担当者は取材に対し、「職員をカスハラから守りたい」と話した。
都は来年2月頃、カスハラ対策の共通マニュアルを作成する。自治体を含め、それぞれの業界でのマニュアル作りを促す考えだ。
「行き場のない怒りぶつけるのはやめてほしい」
ある区の広聴部署に勤める男性職員(30)は、「区民からかかってくる電話のうち、半分ぐらいは罵声です」と明かす。