なでしこ不動の司令塔、長谷川唯のプレーはどれをとっても一級品。日本の女子スポーツ選手に勇気を与える存在だ【パリ五輪の選ばれし18人】
15歳ながら飛び級でU-17W杯に出場
パリ五輪に挑むなでしこジャパンのメンバーがついに発表された。ここでは12年ぶりのメダル獲得を目ざす日本女子代表の選ばれし18人を紹介。今回はMF長谷川唯だ。 【PHOTO】7月25日にパリ五輪初戦を迎える、なでしこジャパン18人とバックアップメンバー4人を一挙紹介! ――◆――◆―― なでしこジャパン不動の司令塔として活躍する長谷川唯は、パリ五輪において日本の命運を握る存在と言っても過言ではない。足もとの技術の高さ、周囲を生かす展開力、そしてラストパスと自らもゴールを生み出せるプレーは、どれをとっても一級品だ。 なでしこジャパンのパリ五輪メンバーで、熊谷紗希(ローマ/イタリア)の国際Aマッチ151試合出場に次ぎ、長谷川は84試合に出場している。20得点はなでしこのMFで最も多く、これまでも重要な試合でゴールを奪ってきた。 経験と実績を積み上げてきた27歳の長谷川にとって、サッカー人生の中でハイライトのひとつにしたいパリ五輪となりそうだ。 日テレ・ベレーザ(現、日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の育成組織である日テレ・メニーナで背番号10番を着け、その才能はすぐに全国区となった。メニーナからベレーザに昇格してからも、緻密なポジショニングにこだわり、籾木結花(レスター/イングランド)、田中美南(INAC神戸レオネッサ)らとともにベレーザの強力な攻撃陣を形成。2015年からのなでしこリーグ5連覇の原動力となり、ベレーザの黄金期を支える選手となった。 代表チームでは、2012年のU-17女子ワールドカップに、当時15歳ながら飛び級で出場。そこではベスト8で終わったが、2年後のU-17女子W杯で初優勝に貢献した。3試合連続得点を挙げた長谷川は、大会MVPの次点にあたるシルバーボール賞を受賞する。 2016年のU-20女子W杯では3位に輝き、その約3か月後にはなでしこジャパンに初招集。2017年、アルガルベカップのスペイン女子代表戦でデビューを飾ると、次戦のアイスランド女子代表戦では2得点を決め、さっそく勝利の立役者に。長谷川はそこから日本女子代表に定着していき、やがて中心選手となっていった。 なでしこジャパンに選ばれて間もない当時20歳の長谷川が、「ここに来るまで結構時間がかかったなと思う」とこぼしたことがある。世界を意識しながらプレーしてきた、彼女らしい言葉だ。 海外に活躍の場を求めるのも自然な流れだったのかもしれない。 2021年1月には海外でのプレーを決意し、ミラン(イタリア)、ウェストハム(イングランド)、マンチェスター・シティ(イングランド)と、長谷川は順調にステップアップしていく。 そして近年、世界中のスター選手が集まるイングランドの女子リーグ(WSL)において、守から攻への切り替えの早さに磨きをかけ、強豪マンチェスター・Cで主力を務める。 長谷川は157センチの低身長であるにもかかわらず、群雄割拠のリーグで存在感を示し続けている事実は、未来を担う日本の女子スポーツ選手に大きな勇気を与えているはずだ。 ただ、長谷川にはオリンピックの苦い経験がある。2021年の東京五輪でベスト8に留まり「世界を相手に何もできなかった。せっかく日本で大きな舞台を迎えられたのに、期待に応えられなかった」と振り返る。 当時と比べると長谷川のネームバリューは格段に上がり、パリ五輪では彼女への徹底マークが予想される。そのなかでどのようなパフォーマンスを見せるのか、長谷川の真価が問われる夏になりそうだ。 取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)