ヒアリ上陸、私たちはこれから何に備えるべきか?
日本本土初のヒアリおよびアカカミアリの上陸という事態に環境省も自治体も慌てふためいた。神戸市では緊急の対策会議が開催され筆者も有識者として召喚された。まずは発見されたコンテナヤード周辺のモニタリングを強化するとともに、街全体の監視を定期的に行い、侵入・分布拡大が起こっていないかを確認することとした。その時点で収集された情報および筆者自身が視察した限り、まだヒアリもアカカミアリも営巣して、数を増やしているという状況にはないものと考えられ、少なくとも今回の上陸発見に関しては速やかに駆除が成功したものと考えられた。 しかし、この事態は神戸に限ったことではないだろうと、その時点で筆者は考えていた。というのも、昨年まで実施した外来種対策研究プロジェクトの中で、すでにヒアリの侵入予測をしていたのだが、ヒアリが生息するエリアからのコンテナ輸入量をパラメータとして日本各地の港湾施設における侵入リスクを評価した結果、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡、といった大型国際港が(当たり前の結果ではあるが)軒並み高いランキングに入ることが示されたのである。つまり神戸で起こったことは、これらの港でも必ず起こると予測できたのである。 案の定、程なくして他の港でもヒアリが続々と発見された。6月27日名古屋港7月4日大阪港、7月6日東京港、7月14日横浜港、そして7月21日博多港でヒアリ個体もしくは集団が発見され、予測はほぼ全て的中した形となった。また7月10日には愛知県春日井市の電化製品メーカーの倉庫敷地内でヒアリ個体が確認され、港から内陸部にもヒアリが運ばれていることが明らかとなった。 すっかりヒアリばかりが注目されがちになってしまったが、神戸港でヒアリとともに発見された毒アリ・アカカミアリも、6月23日に大阪港で、7月9日に名古屋港で発見されており、さらに7月12日には、茨城県の常陸太田市という内陸部に運ばれて来たコンテナ内で生きた個体が確認されている。