ヒアリ上陸、私たちはこれから何に備えるべきか?
ヒアリは日本で増えるのか?
そもそもヒアリは日本に定着できるのか? 増えるのか? という点が気になる。今回わずか2カ月の間に次々と港からヒアリが発見されたことから、実は前々からヒアリは海外から持ち込まれており、今回たまたま神戸での発見を皮切りに、注意する目が増えたことで発見が相次いだのではないかという意見もある。だとすれば、彼らは何回も国内への侵入を試みているが、日本の環境が彼らには適しておらず、分布拡大には至っていないのかもしれない。 しかし、これはあくまでも希望的観測であり、より危険側に立って予測すれば、彼らが上陸を始めたのは、あるいはその持ち込み数が増えたのは、やはりここ数年の出来事であり、背景には中国におけるヒアリの急増があるかもしれない。だとすれば今後彼らが国内に分布を広げていくチャンスはますます増大するものと考えなければならない。 ヒアリは熱帯~亜熱帯域の気温が高いエリアに生息する種とされるが、実際には巣穴さえ確保できれば地中奥深くに身をひそめることで日本の冬は乗り切れると予測される。特に横浜港では、港内のアスファルトの割れ目で営巣していたかもしれないと思われるほどたくさんの働きアリと卵・幼虫・蛹が発見されており、このことは、必ずしも広い土地がなくても、彼らは街中のコンクリートやアスファルトの隙間を活用して巣を広げることができることを示唆している。つまり彼らは都会のジャングルでも十分に生きていける能力をもち、電化製品や下水などの都市インフラの熱源を利用して、かなり緯度の高いエリアでも分布を広げる可能性を秘めている。 実際に亜熱帯域原産のセアカゴケグモは、1995年に大阪で侵入が発見されて以降、分布を広げ続け、現在では東北や北陸にまで生息が確認されている。すでに日本の環境は人間の手によって大きく改変されており、そうした環境異変の中で、外来生物は予想外の広がりを見せることがある。したがって、ヒアリについても日本各地で十分な警戒態勢をとっておく必要がある。