日銀・黒田総裁会見4月27日(全文1)粘り強く金融緩和を続ける必要がある
量的・質的金融緩和を継続
加えて感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持される下で、金融仲介機能が円滑に発揮されると考えていますが、これらの点には大きな不確実性があります。その上でリスクバランスは経済の見通しについては感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクのほうが大きいですが、見通し期間の中盤以降はリスクはおおむね上下にバランスするとみています。物価の見通しについては下振れリスクのほうが大きいとみています。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。 また、引き続き新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、それぞれ約12兆円および約1800億円の年間増加ペースの上限の下でのETFおよびJ-REITの買い入れにより企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていきます。 その上で当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
緊急事態宣言が物価、経済に与える影響は
読売新聞:ありがとうございます。2点目ですけれども、東京都や大阪府などに緊急事態宣言が発令されています。今回の宣言下では酒類を提供している飲食店とか大型の商業施設とかが休業を余儀なくされていますけれども、こうした緊急事態宣言が物価もしくは経済に与える影響をどう考えていらっしゃいますか。 黒田:感染症の再拡大を受けまして、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などの、いわゆる公衆衛生上の措置が講じられております。当面、個人消費は対面型サービスを中心に低めの水準で足踏みした状態が続くとみております。一方で財消費は堅調なほか、世界経済が総じて見れば回復している下で輸出は増加を続けています。また、企業の収益が改善し、設備投資が持ち直すなど、所得から支出への前向きの循環メカニズムも徐々に働き始めています。こうした下で当然の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、その後は回復していくとみております。 ただし、以上の見通しにつきましては感染症の影響を含めて不確実性が大きいということは認識しております。特に当面は変異株を含めた感染症の動向や、その経済活動への影響に注意が必要であり、下振れリスクが大きいとみています。また、経済のリスク要因が顕在化すれば物価にも相応の影響が及ぶ可能性があります。日本銀行としては引き続き経済・物価の動向をしっかりと注視してまいりたいと考えております。