食材ハンター料理長×「徳山鮓」の発酵技術が創り出した“体に良くておいしい日本の料理”を銀座で!
こちらで提供されるのは10品からなるおまかせコース(35,000円)。本日の先付は解禁になったばかりの「香箱蟹」だ。提供する1時間半前にさばきはじめるのだが、これがアクのまわらないギリギリの時間なのだそう。外子のプチプチシャキシャキした食感、内子のねっとりとしたうまみ、繊細で甘みのある身、芳醇な味噌、蟹のおいしい要素がこの小さな甲羅の器の中にぎっしり詰まっている。
「お造り」には淡路から直送された鯛を。数時間ほど締め、しっとりとしながらも弾力を感じるように仕上げている。好みで塩と酢橘か山葵醤油をつけて食すれば、程よい歯応えの後から滲み出るうまみを感じる。
吸い地は2日間水出しした「奥井海生堂」の利尻昆布に少量の鰹節で取った出汁、味付けは椀種由来のみ、椀妻には芽葱、吸い口には荏胡麻という「お椀」は、昆布の甘みが際立つ極上の味わい。椀の中の食材だけでこれほどまで深く豊かな味になることに感嘆せざるを得ない。
食材に語りかけてたどり着いた引き算の美学
本日の「焼き」は炭火焼きにした鴨。「夕方の餌を食べる前に獲った鴨が一番おいしいことも仕留めた後の処理の仕方も現地で猟師さんに教わりました。食材は嘘をつきません。適当に処理をした食材は味も適当になります」と、いかに生産者との絆が大切かを語る。
付け合わせにはクレソンを。「天然は葉が大きくなると軸が硬くなるので小さいものを選んでいます」と話すクレソンの葉は生き生きとして張りも見事。目の前に出されるといい香りが漂い食指が動く。
鴨は水分を失わないように骨付きのままゆっくり時間をかけて焼く。皮はパリッとしているが、皿の上に置くと身は沈むくらいやわらかく瑞々しい。これはかつて味わったことのない食感だ。焼きのテクニックはフランス料理仕込みだが、鴨の骨で取ったジュに八丁味噌を合わせたソースとクレソン独特のピリッとした辛みを添えることで日本料理だと主張し、滋味のある口福の世界へと誘う。おいしいという基準は人それぞれでも、素材と仕込みは嘘をつかないと納得できる一皿だ。