衝撃の97秒…なぜクレベル・コイケはRIZINで萩原京平を予告通りに”秒絞”できたのか…フェザー級王者の牛久への挑戦が正式決定
萩原はアップセットを起こしかけた。 何もできなかったわけではなく見せ場は作った。 ゴングと同時にバックスピンを放ってプレスをかけてワンツーとカーフのコンビネーションでコーナーに追い詰めた。一度はタックルも切り、クレベルが動いた瞬間にカウンターの右ストレートをクリーンヒットさせ、その左目の上を引き裂いたのである。 「手応えはあった」 またたくまに流血するほどのダメージを与え、さらに飛びヒザ蹴りで詰めにいったが、それ以上追い込むことはできなかった。 試合後のインタビューでは呆然自失。 「今は先のことはなかなか考えられへん。考えたくない。やってきたことが、すべてではないが間違っていたか…考えさせられる1日」 クレベルは、セコンドについたRIZINライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザと打撃面の指導を受けていて大晦日に萩原に敗れた鈴木博昭から「ストレートとバックキックに気を付けろ」とアドバイスされていた。それを守れず「間違いを犯した。勉強になったね」との反省はあるが「慌てずに1本取れる」の確信があった。コーナーに下がったのも「待っている方がいい」とあえて計算づくで下した判断だったという。 榊原CEOは、4月17日に行われた王者・牛久絢太郎と前王者・斎藤裕のRIZINフェザー級戦の勝者に、朝倉未来、佐々木憂流迦を撃破して無冠でありながら事実上のフェザー級最強ファイターであるクレベルを挑戦させるプランを固めてオファーした。だが、ハングリーなクレベルは、「その前に1試合挟みたい」と萩原戦を自ら求めた。 3月に弥益ドミネーター聡志に三角絞めで敗れ、もう後のない萩原は捨て身で勝負してくる。 一方のクレベルはタイトル戦の前哨戦として絶対に負けられない試合。プレシャーはかかる。両者のメンタルバランスがどう試合に影響するかがポイントでもあった。 「彼にはリスクがない。だから彼はケンカができる。私にはリスクがある。だから緊張ではなく不安があった。負ければゼロになる」 さすがのクレベルも重圧があったことを認めた。 だが、牛久戦までの2試合をRIZINフェザー級のトーナメント戦だととらえ、萩原戦をセミファイナル、牛久戦をファイナルと位置づけてモチベーションをコントロールしたという。 これでRIZINで5戦5勝ですべて1本勝ち。ボンサイ柔術の源流にあるグレイシー柔術の“400戦無敗“の”レジェンド”ヒクソン・グレイシーを彷彿させるほどの圧倒的な強さを誇る。しかし、そのクレベルのスタイルは研究され、打撃面に弱点があることが浮き彫りになり、決めのパターンも白日のもとにさらされている。それでもクレベルは負けない。その理由を問われ「凄い練習を積んでいるからだ」とシンプルに答えた。 前戦の佐々木戦は2月23日に開催されたが、翌日休んだだけで25日から道場に姿を見せたという。 「今のスタイルを変える気はない。負けたら変わるかもしれないが」 練習量と揺るがぬ信念がバックボーンにある。だからクレベルは本物なのだ。