ほぼ日手帳、売上高の過半は海外 書き込みたくなる工夫 「ほぼ日手帳」(下)
日本で最も売れている手帳の「ほぼ日手帳」は過半数が国外で売れているというグローバル商品でもある。今や100を超える国・地域に愛用者がいる。言語の壁を越えただけではなく、年齢や性別、職種などにも関係なく支持を広げている点でもこれまでの手帳の枠に収まらない。日本発の「ユニバーサル(誰でも)手帳」が生まれた背景を探った。(前回の記事<「ほぼ日手帳」好かれる理由 ユーザー目線でNo.1に>) 事業主体の「株式会社ほぼ日」が発表した2024年8月期の決算は、ほぼ日手帳の売上高に占める海外分が52%に達し、初めて国内を上回った。日本発の手帳では過去に例がないだろう。北中米・欧州を中心に引き合いが強まった。 ほぼ日手帳の売上高は49億4200万円で、ほぼ日の売上高の65.6%を占める稼ぎ頭だ。最初に発売した2001年に1万2000部から始まった、ほぼ日手帳は2024年版の販売部数が過去最高の90万部を記録。日本のナンバーワン手帳に育った。 手帳業界の常識を打ち破る急成長を支えたのは、セオリーをなぞらない逆張りのアプローチだった。基本タイプの「1日1ページ」式は1週間1ページ式に比べてページ数がかさむ。スケジュール管理至上主義を離れたのも旧来のビジネス手帳とは発想が異なる。 手帳の売り上げが多いので、東京証券取引所の扱いでは小売業に位置付けられている。しかし、「ほぼ日はコンテンツの会社。手帳もメディア」と、小泉絢子副社長兼最高執行責任者(COO)は自分たちの立ち位置を示す。実際に同社はウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営から始まっている。だから、ほぼ日手帳も社内ではコンテンツの扱いだ。 コンテンツ色を印象付けるのは、ページ下の欄に載っている「日々の言葉」だ。「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載された連載や対談からえりすぐった名言や、くすっと笑える「迷言」を毎日1つずつ載せている。膨大な記事の中から選ばれた言葉を編集するのは、たった1人の担当者だ。