ほぼ日手帳、売上高の過半は海外 書き込みたくなる工夫 「ほぼ日手帳」(下)
「10年以上、同じ担当者に任せている」と、現在の手帳チームリーダーを務める星野槙子氏は明かす。候補の言葉を紙に出力。床に並べて、365日それぞれの日付に当てはめながら、「読む手帳」として編集していく。ほぼ日刊イトイ新聞を運営する、ほぼ日にしか生み出せないコンテンツだ。 ほぼ日手帳は出来上がった状態で売り出すパッケージコンテンツではない。日々の記録や思いを書き込んでコンテンツ(中身)を生み出すのは手帳の持ち主本人だ。「ほぼ日手帳」はたっぷりの書き込みスペースを用意して、手帳オーナーの書き込みモチベーションを引き出す「呼び水」の役割を担う。 1年間をかけて体験やアイデア、気持ちを書き入れた手帳は値段のつけようがない宝物になる。ほぼ日手帳を使い続ける人が増える理由だ。ユーザーが思い思いに使い方を広げてくれたおかげで、「手帳の範疇(はんちゅう)を超えることができた」(小泉氏)。 自在に書き込める紙の束でよければ、一般的なノートがある。しかし、ほぼ日手帳のような人生の「相棒、伴走者」としての支持を得てはいない。真っ白いノートに日々の出来事や気づきを書き込むのは続けにくい。書き込みを誘うには、日付や枠取り、サイズといった物理的な「補助線」が必要だ。 ほぼ日手帳には「1日1ページ」のほかにも書き込みマインドを引き出す工夫があちこちに施されている。スムーズにペンが走る専用紙、適切なサイズの方眼、きれいに開く造本などがそうだ。要するに、書きたい気持ちを邪魔せず、そっとひじを押すような手帳なのだ。2009年版では佐藤卓氏が主宰するデザイン会社「TSDO」と組んで細部にわたるまで改良を行った。 これまでのビジネス系手帳には目に見えない制約があった。スケジュール欄には予定を書く、スペースを節約して簡潔に書くといった決まり事は、それ以外の用件や書き方を暗に封じ込めていた。「業務用」のたたずまいはその他の目的でページを開く気持ちさえ遠ざけた。 だから、仕事に関係のない思いつきや、ふとした感想、趣味の情報は書き込みにくかった。でも、日々を過ごしていれば、自然と様々なことを見聞きし、味わい、感じる。そうした多様な「眠れるコンテンツ」に、格好の受け皿を差し出したのが、ほぼ日手帳だった。