なぜ岡崎慎司はミラクル・レスター時代を後悔しているのか? 日本人が海外クラブで馴染めない要因とは<RS of the Year 2024>
パリ五輪を筆頭に、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2024年。『REAL SPORTS』は、アスリートやアスリートを支える人々の“リアル”を、そして結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた。そこで、2024年に特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、“ミラクル・レスター”の一員としてイングランド・プレミアリーグ優勝を経験した岡崎慎司のインタビューを通して、海外クラブで結果を出すことの難しさについて深掘りする。 (2023年12月8日公開) =================================
2015-16シーズン、クラブ創設以来初のイングランド・プレミアリーグ優勝を成し遂げたレスター。前年は残留争いをしていたクラブの誰も予想し得なかった快挙に“ミラクル・レスター”と世界中から讃えられた。その奇跡的な優勝劇を支えた選手の一人である岡崎慎司にとって、レスター時代は大きな喜びと後悔が入り混じる時期だったという。岡崎が「一番後悔」し、若い選手に「知ってもらいたい」とあえて振り返る過去とは? (インタビュー・構成=中野吉之伴、写真=Press Association/アフロ)
「一番後悔してるのは…」代表と所属クラブで訪れた苦境
元日本代表FW岡崎慎司のキャリアは比類なきものがある。代表通算119試合に出場し50得点。歴代で釜本邦茂、三浦知良に次ぐ歴代3位の得点数だ。 2011年に清水エスパルスからシュツットガルトへ移籍すると、その後マインツで2年連続2桁ゴールをマーク。2015年にプレミアリーグのレスターへ移籍を果たすと、クラブ創設132年で初のプレミアリーグ優勝という歴史的偉業に貢献した。レスターの後はスペインのウエスカ、カルタヘナを経て、シントトロイデンでプレー。海外で14シーズンを戦っている。 華々しい戦績の数々を持つ岡崎は、飽くなき野心とハングリー精神でこれまであらゆる苦難を乗り越えてきたが、これまでのキャリアの中で後悔していることもあるという。 「一番後悔してるのは……」 シントトロイデンのスタジアム隣にあるホテルのレストランで話を聞かせてもらっていると、岡崎はそう言って自身の心のうちを明かしてくれた。 「代表監督がハリルさん(ヴァイッド・ハリルホジッチ)になったころですね。当時プレミアリーグでプレーしていた自分をあまりハリルさんが認めてくれていないと感じていて……。『お前がやっているのはディフェンスで、俺はそれを求めてない』みたいな感じで言われることがあって。で、結局選ばれなくなっちゃった。そういうのもあって、あのころはモチベーションの原動力が“怒り”になっていたことが多かったと思うんです。 ちょうどレスターでもうまく監督に使われちゃっていて……。チームが駄目になったら自分が使われて、やっと立て直したと思ったら、また誰か新しい選手が起用されて俺が出れなくなるみたいな流れがずっと続いていたんです。『なんで俺のことを信用してくれないのかな』って」 代表と所属クラブ、その両方で訪れた苦境が心身を蝕む。 「俺は代表にこだわりを持っていたし、そのこだわりはもちろん大事なんですけど、ただそこに気持ちだけが前のめりになってしまったのかもしれないです。ケガがそのときから多くなったんですよ。それまではほとんどケガはなかったのに。ひざやって、足首やって、ボロボロになったのがあのときでした。無理してしまったんですね。 あのころ、すごいコンディションはよかったんですよ。なのに自分から崩していってしまった。それが一番の自分の後悔。だから、若手のみんなにはそうなってほしくないなっていう思いがとても強いです。無理はしすぎちゃいけない。今のチームでも例えば橋岡(大樹)とかによくそういう話をします」