なぜ岡崎慎司はミラクル・レスター時代を後悔しているのか? 日本人が海外クラブで馴染めない要因とは<RS of the Year 2024>
ブレない岡崎は戦い続ける「今は否定することもできている」
結果として1年で移籍ということもあるかもしれない。でもそのうえで、あえて今の所属チームと距離を縮めようとしないというのは、岡崎の言うようにもったいないことではないだろうか。 岡崎自身、がむしゃらに貪欲に高みを目指してやってきたからこそ切り開いた道もあるだろう。その経験が無駄であるはずはない。それでも、人生にはさまざまな分岐点がある。時にはそうじゃない別の道にはまた別の新しい可能性だってあったかもしれないのだ。 「そうそう、そうなんです。今まで僕は全部を肯定してきたんですよ、自分の生き方も何もかも。別に言葉ができなくてもサッカーで結果を出せばそれがモチベーションになるとか。けど今は否定することもできている。そうじゃない道をたどったらもっと上に行けたかもしれないという考えを持ちながら取り組めている。だから選手としてまだ何かできることがあるんじゃないかっていうのを探せている。これ、(この境地に)たどり着ける人そんなにいないんじゃないかな(笑)」 今までと同じルートを歩んでも面白くない。だから考えて、考えて、あえてみんなが行っていないような道を歩んでいく。そうやって岡崎は今も自分の生きる道を探し続けているのだ。そういえばシュツットガルト時代に「海外でキャリアを終えたい?」と尋ねてみたことがある。10年ほど前の話だ。 「いや、それは思わないんですけど……」 そう笑って、このように続きを語っていたのを思い出す。 「自分的にはまだまだ大器晩成やとふんでいるんで(笑)。点が取れなくても、まだ自分が爆発するところではないって思ったり。内容がよければ絶対結果につながるって信じてるんで。そこでブレてしまったら、自分はたぶんもう終わりだから」 岡崎は今もブレていない。その真摯な取り組みが未来を切り開くと信じて戦い続けている。 <了>
[PROFILE] 岡崎慎司(おかざき・しんじ) 1986年4月16日生まれ、兵庫県出身。元サッカー日本代表。滝川第二高校を経て2005年にJリーグ・清水エスパルスに加入。2011年にドイツ・ブンデスリーガのシュツットガルトへ移籍。2013年から同じくブンデスリーガのマインツでプレーし、2年連続2桁得点を挙げる。2015年にイングランド・プレミアリーグ、レスターに加入。加入初年度の2015-16シーズン、クラブ創設132年で初のプレミアリーグ優勝に貢献。2019年に活躍の地をスペインに移し、ラリーガ2部のウエスカに移籍。リーグ戦12得点を挙げてチーム得点王として優勝(1部昇格)に貢献。2021年8月より同じくラリーガ2部のカルタヘナでプレー。2022年8月にベルギー1部・シント=トロイデンへ移籍。日本代表としても、歴代3位の通算50得点を記録し、3度のワールドカップ出場を経験。2016年にはアジア国際最優秀選手賞を受賞している。2024年5月に現役を引退。
インタビュー・構成=中野吉之伴