ありそうでなかった「究極のテレワーク場」!? 新クルーズ船「MITSUI OCEAN FUJI」みてきた クルーズ市場の火付け役に
ありそうでなかった「仕事できる場所」
向井社長はさらに「客室だけでなく、共用エリアも心地よい場所がたくさんある」と説明。特に「MITSUI OCEAN スクエア」はスイーツやコーヒーを楽しむカフェであり、本を読むラウンジであり、フロントデスクや観光ツアー予約といった機能も持っています。 「電源のコンセントもあり、仕事もしやすい。船内はスターリンクの wi-fi 設備も整っている。こういった多目的に使え、誰もが行くことができる場所は(クルーズ船には)ありそうでなかった。決して派手な空間ではなく、世界唯一というような謳い文句はつかないが、目的なしに誰でも集える場所は貴重だ。仕事や作業をしながら次の目的地へ移動できるということは、働く世代にも十分アピールできるポイントではないかと思う」(向井社長) 現在、「MITSUI OCEAN FUJI」はバハマ船籍のため、クルーズのたびに海外の港へ寄港する必要がありますが、向井社長は「できるだけ早いタイミングで日本籍化したい」と話していました。
日本のクルーズ「群雄割拠」時代へ突入か
商船三井クルーズは今後、「にっぽん丸」と「MITSUI OCEAN FUJI」の2隻体制で運航していくことになりますが、商船三井グループでは2027年以降に3万5000総トン級の新造船を2隻導入することを計画中です。 「まず2隻でしっかりと安全安心に、そしてお客様に喜んでいただけるようなクルーズを安定的に提供していきたい。新造船については、どれだけ私どもが評価いただけるか、たくさんのお客様に乗船していただけるかがポイントになるが、2隻で終わりということはない」 向井社長はこう話し、より多くのクルーズ船を運航していくここと明言しました。「にっぽん丸」は年間2万5000人から3万人弱が乗船していることから、1隻当たり同水準の年間乗船者数を見込みます。 2025年には日本郵船グループのLNG燃料クルーズ船「飛鳥III」が、2027年には両備ホールディングスのスモールラグジュアリー船が、そして2028年にはオリエンタルランドが発注した14万総トン級となるディズニークルーズの新造船が予定されています。「飛鳥II」と「にっぽん丸」の2大巨頭となっていた日本のクルーズ市場は、一転して群雄割拠の時代を迎える見込みです。 向井社長が「国内外のさまざまなブランドがクルーズを提供していくことが、日本のお客様にとって、クルーズを身近なものにしていくきっかけとなる。マーケットが広がればクルーズ利用者は増えていく。当社はこれを好機ととらえている」と語るように、「MITSUI OCEAN FUJI」の船出は日本のクルーズ市場の活性化に向けた一つのポイントとなるでしょう。
深水千翔(海事ライター)