交信不能の「ひとみ」は2つに分離か JAXA会見「本体は残存との立場」
2月17日に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ(ASTRO-H)」の通信が途絶えている問題で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1日、記者会見し、「ひとみ」が2つに分離した可能性を報告した。機体は現在、回転している状態だと考えられるが、あくまで「衛星本体は残存している」との立場を示した。衛星の姿勢異常と通信不能だけではなく、機体が分離したかもしれない状況に、JAXA宇宙科学研究所の常田佐久所長は「重大な事態だと認識している。何が何でも復旧させたい」と述べた。
●6つに分解した?
「ひとみ」をめぐっては、米国国防総省戦略軍統合宇宙運用センター(JSpOC)が、機体周辺に5つの物体があると公表するなど、分解説も出ている。 この日の会見で、JAXAとしては「ひとみ」に由来するとみられる2物体を確認したと説明。どちらかは「ひとみ」から分離したものである可能性を示した。ただ、常田所長は「真っ二つに分かれた状態にはなっていないと思っている。衛星本体は残存している」との立場を強調した。機体については現在、どのような回転かは分からないものの、回転している状態だとみられている。 本体が残存している根拠としては、“分離”後も、4回の電波を受信していることを挙げ、「破壊されたのなら電波を出すことは難しい」とした。また、あくまで推測として、衛星内に爆発的現象を引き起こすものがないとも述べた。
●分離した要因は?
機体の分離には3つの内部要因の可能性が考えられるという。(1)燃料がある推進系によるもの、(2)バッテリーが高温になって破裂、(3)ヘリウムタンクが爆発、などだが、JAXA宇宙科学プログラムディレクタの久保田孝氏は、現段階では決め手はなく、原因は分からないと述べた。 また外部要因として、宇宙ごみ(デブリ)による衝突も指摘されるが、常田所長は「現在のところ、デブリによって起きたという証拠はない」との見方を示した。久保田氏も「まずは姿勢異常に因果関係があるものなのかを疑って検討している」と述べた。ただ、JSpOCにも能力的な限界はあり、観測できていない小さなデブリについては否定できないという。 JSpOCの情報では、3月26日午前10時40分前後に機体が分離したとみられるが、衛星の姿勢異常から分離までには約6時間半かかっている。常田所長は「実際は姿勢異常が先に始まっている。(姿勢異常と分離の)2つの関係の解明が調査のポイントの一つ」との認識を示した。