問題視される「毒職場」。公衆衛生局長官が雇用主に改善を求める(米国)。専門家により雇用主・労働者双方に対して提案された改善方法を紹介
ウィキペディアにも載っている「毒になる職場」が蔓延る米国でついに政府側が警告する事態となりました。 労働被害者の闇「ネット上で集った集団が、狂気の殺人へと突き進む」映画『Cloud クラウド』【菅田将暉×黒沢清 】
毒職場(有害な職場環境)を見分ける5つのポイント
公衆衛生局長官が公表したガイダンスによると、以下の5つの資質を擁しているかによって、その職場が有害かどうかが判断できるそうです。 それはその職場の文化が、「互いに対する敬意を欠き(disrespectful)」「非包括的で(noninclusive)」「非倫理的な(unethical)」、そして「競い合いが熾烈な(cutthroat)」さらに「虐待的な(abusive)」である場合ということ。 そしてオハイオ州に本拠地を置き、研究と教育を基に臨床と医療ケアを統合させた非営利医療機関であるクリーブランド・クリニック神経学研究所の臨床心理博士であるエイミー・サリバン氏によれば、「もしあなたがいまの職場環境を、『毒だ』と感じているのであれば、それはその時点で大抵はそうなのです」と述べます。彼女は、職場環境におけるエンゲージメントとウェルビーイングのスペシャリストであり、ディレクターを務めています。彼女は、「私たちはそういった環境で働き、その職場環境に安全さが感じられない場合、あるいは精神的に健康ではないと感じられる場合には、『この職場は有害だ』とガット・フィーリング(お腹のそこから実感、感じ取る直感)で感じるはずです」と言います。 「多くの人は通常、その不平で少しでも苦情を言えば、大事になることを危惧して『言わずもがな、見ればわかる』といった感覚になっていきます」と、アメリカ心理学会で応用部門シニアディレクターを務めるデニス・ストール氏は述べています。 そんなストール氏は、このガイダンスでピックアップされている心理学の研究に取り組んでいます。 サリバン氏は、「ネガティブな労働環境に苦しむ人々は、その状態が『(本来の)自分ではない』と認識すべきです。そして、仕事から自分の感情をできる限り切り離すようにする――つまり、健康や幸せ、ウェルビーイングがあなたの仕事と感情的に結びつかないようにするほど良いでしょう」と言います。 専門家によれば、もし仕事中にストレスを感じたら、散歩をしたり、短い間職場を離れたり、コーヒーや紅茶などあなたが楽しめるもので休憩をとったり、同じような問題を経験している信頼のおける同僚と話したりするなど、既に有効とされている一般的な方法を試してみることをすすめています。また、マインドフルネスの呼吸法を実践したり、食事や運動をしたりするなどライフスタイルを変えることも有効です。自分に合ったセルフケアを見つけるまで、いろいろなことを試してみて欲しいとのことです。 雇用主はどうすべきなのか? アメリカ公衆衛生局のガイドラインは、下記5つの必須事項を組織が実行するためのフレームワークを示すものです。 雇用主への提言の中には、「有給休暇を取得しやすくすること」と、「実際に生活できる賃金を支払うこと」が挙げられています。実際の賃金例は、「アメリカの労働者のうち約三分の一近くが時給15ドル以下であること」が指摘されていますが、具体的な金額は提示されていません。また研修やメンタリングを提供し、包括性と公平性を促進すること。そして、「いつ、どこで、どのように仕事をするか」について、労働者により多くの自律性を与えるべきと説いています。 「一度はチェックするものの、その後忘れ去られてしまうような単一のステップで対応するのではなく、会社文化の継続的な改善として目を向け続けるべきなのです」と、ストール氏は述べています。そして、「雇用主こそが自らの力を行使して実行すべきときなのです。変化はいつの間にか向こうやってくるものではないのですから…」とのこと。