「日本はなぜ死亡者数が少ないか」専門家会議が挙げたいくつかの要因
諸外国とは異なるクラスター対策の手法
クラスター対策は諸外国でも行われている。しかし、日本の対策はそれらとは違う手法を取っているという。何が違うのか。尾身氏によると、それは濃厚接触者の調査における時間軸の「向き」だという。 ほとんどの諸外国では、新規に見つけた感染者を起点に、その濃厚接触者を洗い出し、実際に発症するかどうか将来の感染者を探すという「前向き」な調査を行っている。 日本では、そうした「前向き」な調査に加え、感染者の過去の行動を「さかのぼる」のだという。新型コロナウイルスの伝播の特徴を踏まえ、感染者を見つけた際に「どこに行ったか」などを調査し、共通の感染源となった場所や、その場所にいた濃厚接触者を突き止める。 つまり、日本の「さかのぼり」調査は、感染が起きた後の「感染連鎖を見逃さない」ことに力点が置かれていた。こうした調査はこれまで結核患者などに保健所が行ってきた調査方法が土台となっており、これによって発見できた特徴が「3密」だという。
クラスター対策「限界論」に対する反論
クラスター対策をめぐっては、感染拡大が加速して感染者が急増すると対応しきれないとの「限界論」を指摘する見方もあり、この日の会見でも「保健所のマンパワー的にクラスター対策にどこまで効果があるかという声もある」との質問が出た。 こうした見方に対し、押谷氏は「クラスター対策という言葉が独り歩きしているところがあって、『クラスター潰し』だけをしているように誤解されている」と反論した。 「日本では諸外国に比べてたくさんクラスターが見つかっているが、(それによって)クラスターに共通する特徴を見つけることができた。最初に見つけたのが『3密』。そういう環境を『なるべく避けてください』というメッセージを効果的に送ることができた。これは諸外国ではほとんどできていない。日本では、未然にクラスターが発生することを防ぐことができる体制にできた」 さらに「クラスターを見つけることで(リンクの追えない)孤発例が見つかる。孤発例がたくさんできるということは、その裏側にきっとクラスターがあるはずという前提に立つと、それだけ地域で感染伝播がある可能性がある。緊急事態宣言をしたように、より積極的な対策をしないといけない。そういう兆候を見つけられるのが、クラスターを見つけることの意味」と続けた。 多くのクラスターが各地で発生することで保健所のリソースがひっ迫し、「我々の解析のところに(情報が)来るのが少し遅れるとか、一つ一つを綿密に解析できないフェーズは確かにあった」と明かしたが、「そういう状況でも、我々のやっていることが破綻するということではない」と述べた。