進化するスポーツ エージェンシー の役割:アスリートとブランドを結びつける新たなマーケティングモデル
進化するスポーツエージェンシーの新たな役割
これらのショップは、スポーツマーケティング内で生じた段階的な変化により、スポーツ選手とブランドのパトロンとのあいだの関係が、インフルエンサーと広告主との関係と次第に似てきたのと並行して出現したものだ。スポンサーシップの契約は次第に短くなり、無期限のアンバサダーシップと想定されるものから、一時的なキャンペーンに近くなってきた。 また、テレビや広告のタレントとしてよりも、インスタグラムやTikTokでのアスリートのけん引力に焦点があてられるようになってきた。エージェンシーで毎年扱う「数百の」ブランド契約のうち、主要なソーシャルコンポーネントを含まないキャンペーンは「数十程度」だと、エウェイズ氏は推定している。 広告代理店のハバスプレイ・ユーケイ(Havas Play UK)でタレントインフルエンサーの責任者を務めるソフィー・バーマン氏によると、これらの企業は広告主の要求を満たすとともに、特定のアスリートに関連付けられたソーシャルコンテンツの品質が「極めて本物らしく感じられ」、十分に高い標準に従っていることを保証するような「新しいタイプのエージェンシー」だという。 たとえば、エージェンシーのビーエンゲージドはアーセナル(Arsenal)のカイ・ハフェルツ氏、マンチェスターユナイテッド(Manchester United)のメイソン・マウント氏など21人のボクサー、フットボール選手およびサッカー選手を名簿に載せている。創設者のエーセン・シャー氏によると、同社はアスリートとブランドとのあいだでタレントの代理人業務と関係の調整を行っているという。 広告主やそのクリエイティブエージェンシーは主に、目的のキャンペーンにアスリートを含めると決定してからアプローチを行う。たとえば、ビーエンゲージドは英国のエージェンシーのレッドコンサルタンシー(Red Consultancy)およびオグルビー(Ogilvy)と協力してきたとシャー氏は述べている一方で、ハバスプレイ(Havas Play)は過去にステータス(Status)と協力していたとバーマン氏は述べている。 クラッチのようなエージェンシーは、第1に自社のプレイヤークライアントの代理人だが、チームアップは広告主とアスリートの両方に向いている必要があると、エウェイズ氏は語る。クライアントのジュジュ・ワトキンス氏の場合、「学生アスリートとしての姿が第1」で、有名人としての姿が第2という方針から、エージェンシーはコートにおける同氏の優先順位に留意する必要がある。 しかし、それでもブランドの優先順位と同氏の公的なキャラクターを「結びつける」リレーションシップを促進できている。たとえば、スポーツ用品大手のナイキ(Nike)のスポンサーシップは最近になって衣類の寄贈や、同氏の家族によってロサンゼルスで運営されている女性向けシェルターにも拡大された。 クラッチやビーエンゲージドなどのエージェンシーは依然として、アスリートクライアントからのリテーナーフィーと、新しい契約から得られる手数料の支払いを受けているが、ブランドとアスリートとのギャップを埋めつつある。プレイヤーには一般に、ブランドの契約に必要なレベルでTikTokやインスタグラムにプレゼンスを維持し、管理する時間がなく、タレントエージェンシーにその作業を任せれば、個人のマーケティングチームのニーズを切り捨ててしまう恐れがある。 「アスリートはコンテンツマシンだが、ほとんどのアスリートはその作業を自分自身で行ってはいない」と、調査助言会社ガートナー(Gartner)のガートナーフォーマーケターズ(Gartner for Marketers)部門のバイスプレジデントとアナリストを務めるクリス・ロス氏は語る。同時に、エージェンシーがクライアントのキャリアについてプレイヤー側の仲介者として関与することで、アスリートとチームとのあいだの摩擦を軽減できる。 スポーツエージェントは従来から、アスリートの代理人としてチームやスポンサーとの交渉を行ってきたが、ほとんどはブランドのソーシャルメディア契約は扱っていない。 「サッカーのエージェント、特に移籍や給与の一定割合から多くの報酬を得るものは、インバウンドのスポンサーシップ要求を管理するが、積極的なアウトリーチのため労力を注ぎ込むことには、得られる相対的な見返りを考慮すると、価値を見いだしていない」と、スポーツマーケティングエージェンシーのストライプスポンサーシップ(Strive Sponsorship)のマネージングディレクターを務めるマルフ・ミンズ氏はメールで語った。