衆院選「大山鳴動してネズミ一匹」見透かされた希望の曖昧さ
中道左派の受け皿として支持広げた立憲民主
さて、今回の総選挙の結果をざっと分析してみよう。 今回の選挙から衆院の定数が465になったため、与党が全ての常任委員長ポストを得て全ての常任委員会でも過半数を確保する「絶対安定多数」は261議席となったが、自民党の議席数はこの数字を大幅に上回った。憲法改正の発議に必要な3分の2の議席数は310だが、自民と公明の議席を合わせてこの数字を超えることとなった。 当初の予測から考えると自民の大勝利ともいえるが、その最大要因は野党の分裂である。今回は、160強の選挙区で、(1)自民・公明、(2)希望・維新、(3)立憲・共産・社民の「3極」それぞれから候補者が立った。無所属だが各党の系列に属する候補者を入れると、こうした野党分裂型の選挙区はもっと増える。そのため、安倍政権に対する批判票が分散されることとなり、結果的に自民党が有利になった。野党の分裂により自民1強が支えられるというおなじみの構図が繰り返されたわけである。 結成時には大きな期待が持たれた希望の党は、選挙戦中に失速し、公示前の57議席から減らして第3党に終わった。大きな敗因は、小池代表の方針が一貫していないことだったと考えられる。「寛容な改革保守」を掲げたにもかかわらず民進党のリベラル系議員を「排除」すると発言したことは、有権者から反発を受けた。同党はベーシックインカムの導入など斬新な政策を掲げたが、その内実は曖昧であり、財源の問題など実現可能性が疑われていた。さらに「安倍1強を打破する」と言いながら自民党との連立も否定しないなど、政権との向き合い方も明確さに欠けていた。そもそも小池代表が都知事にとどまったので、希望の党には首班候補がいない状況であった。一連のこうした事態が有権者の不信を招いたのであろう。 一方の立憲民主党は、急速に支持を伸ばし第2党となった。公示前の15議席からすると大きな躍進である。 立憲民主党が支持を広げたのは、希望の党とは反対に、立場が一貫していたからだと考えられる。逆境に負けず立ち上がった枝野幸男代表へ強い共感と信頼感を抱く有権者が多かったのだろう。リベラル(中道左派)の有権者の受け皿となる野党が他に少なかったのも大きな要因であろう。たとえば、もし立憲民主がなければ共産党がリベラル系有権者の票を得ていたであろうが、実際のところ共産は公示前議席の21を半分程度に減らす結果となった。リベラル系有権者の票が立憲民主に流れたことを示す証拠である。