アイドルグループの歴史を変えた、夏まゆみの「叱り方」――モーニング娘。の「育ての親」と呼ばれる理由
人を育てれば、次の世代へ教えが受け継がれる
石田さんにとって夏先生の言葉は、初めから共感できるものだった。 「夏先生の本を読んだときに、『できないを言わない』など、『私と同じ意見だ!』と思えることがたくさんあってハッとしたんです。モーニング娘。に受け継がれている夏先生の教えや言葉がたくさんあって、自分のマインドに根付いているんだと実感しました」 「できないを言わない」は冒頭の保田さんにも根付いていた。夏先生の言葉は、個々人だけではなく、グループの大切なものとして、脈々と受け継がれている。 夏先生は自身の仕事を「人材育成」と捉えていた。「人は誰でも輝く」という信念を持ち、スキルを身につけて終わりではなく、その人が輝けるように成長させることが指導だと考えた。相手との適切な関係性や言葉かけで「自分が輝く方法」を教えた。 「言葉」を重視したのは、成功や失敗自体より、そのときに指導者からかけられる言葉によってモチベーションも成長率も大きく変わると実感していたからだ。「成長を本気で願っている」という思いの伝わる言葉が、教え子の心に残っている。 夏まゆみ(なつ・まゆみ)/ダンスプロデューサー。1962年生まれ。イギリス留学をきっかけに、世界各地をまわってオールジャンルのダンスを習得。1993年に日本人で初めてソロダンサーとして米ニューヨーク、アポロシアターに出演。1998年には長野五輪閉会式の振付を担当。吉本印天然素材、宝塚歌劇団、ジャニーズ、マッスルミュージカル等、手がけたアーティストは300組を超え、モーニング娘。やAKB48には立ち上げから参加。ダンスを核に、さまざまなメディアで作品制作に携わった。2014年にはベストセラーを出版するなど執筆や講師業にも尽力し、3年かけて執筆した『人はいつでも、誰だって「エース」になれる! 心とからだが輝く72の言葉』が遺作となった。享年61。 本記事はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」、「#昭和98年」の一つです。仮に昭和が続いていれば、今年で昭和98年。令和になり5年が経ちますが、文化や価値観など現在にも「昭和」「平成」の面影は残っているのではないでしょうか。3つの元号を通して見える違いや残していきたい伝統を振り返り、「今」に活かしたい教訓や、楽しめる情報を発信します。