発明したのは日本人!実は「1日1万歩を目標」に科学的根拠はなかった?「『万』が人が歩く様子に似ていたから」
「1日1万歩」の科学的根拠
1970年代後半、東京学芸大学の波多野義郎博士は、米スタンフォード大学の研究を基に、1日300kcal消費するために必要な正確な歩数を調査し、1万歩と結論づけました。博士は、歩く速さよりも歩数が重要であると認識しました。山佐はこの「万歩計」の商標登録を行い、日本での普及が進んだ。 1996年には、バセット博士がデジタル歩数計の精度に関する研究を発表し、1万歩の概念が国際的に広まった。C・エヴェレット・クープが設立した「Shape Up America!」は、1万歩の重要性を推進し、歩数計の効果を調査しました。2000年には日本でウォーキングが人気の運動となり、4000万人が日常的に行っていると推定される。 2009年にはFitbitが1万歩を目標としたウェアラブルデバイスを発売し、1万歩は健康維持において重要な指標として広く認識されている。
歩数研究のこれから
最近では、当初の歩数に加え、約50年前に波多野博士が注目した歩行強度の重要性も再考察されている。しかし、その研究は驚くほど難しい。昨年の米国スポーツ医学会年次総会で、歩数に関する研究の進歩について発表したフルトン博士は、歩行強度について話すにあたり、映画『シャイニング』で発狂するジャック・ニコルソンの写真を見せた。 そんな写真が使われるほど歩行強度の研究が難しい理由としては、まず一般的に受け入れられる強度の測定基準が存在しないことが挙げられる。それに加えて、速く歩くことで歩数以外の健康上の利点があるかどうかもまだハッキリしていない(強度の定義を試みた2018年のレビュー論文によると、60歳未満の人の“早歩き”は1分あたり100~119歩。これが130歩になると、かなりキビキビした歩き。また、1分あたり約140歩からはジョギング、150歩からはランニングとなる)。 前述のリー博士の研究では、全死因死亡リスク(何らかの原因で死亡するリスク)に焦点が当てられていたため、強度の重要性が実証されることはなかった。しかし、リー博士は「心疾患などで死ななければ健康と言えるわけでない」としたうえで、歩行の強度は健康上の他の問題(血圧、糖尿病、うつ病や不安など)に関連する可能性があると言う。