名残惜しむ鉄道ファン 奥羽線「大沢駅」今月で封鎖 少ない利用客で全列車通過へ
JR東日本は、山形県米沢市にある奥羽線の大沢駅を停車する列車について12月1日から全て通過させることを決めた。「利用客が極めて少ない」ことが理由で、JR東日本では「地元の了承も得ており、将来的には廃止を見込んでいる」としている。峠の難所として知られる駅には、名残を惜しむ鉄道ファンが足を運んでいる。 【写真】大沢駅に停車する奥羽線の普通列車 大沢駅は明治39年12月に開業。奥羽山脈を越える福島、山形県境の板谷峠は急勾配が続くため、かつては列車をジグザグに走らせて坂を上る「スイッチバック」が採用されていた。しかし、急坂を上れる力のある車両の登場などで役割を終え、板谷峠は山形新幹線開通を機に線路が一新され、スイッチバックは姿を消した。 ■20年前で1日約3人 JR東日本は利用者数を非公表としているが、山形県がまとめた平成16年の鉄道輸送実績で大沢駅の利用者は年間1100人。今から20年前、既に単純計算で利用者が1日約3人にとどまっていたことになる。 全列車通過措置について、JR東日本は「説明会を行うなどして地元の了承は得た」(東北本部鉄道事業部)としている。米沢市では乗り合いタクシーなどがあり、鉄道に代わる交通手段になっているという。 12月以降の全列車通過が決まった大沢駅を訪ねた。駅全体が積雪を防ぐスノーシェッドに完全に覆われており、構内は昼間も薄暗く独特な雰囲気。スイッチバック時代に使われていた古いホームも残っている。 暗い中、ひときわ目立つ電光掲示板では「奥羽本線はご利用が少ないため12月1日から全列車が大沢駅を通過します」とのお知らせが流れていた。通路にあった「猿出没のお知らせ」という注意書きには「野生の猿が駅内に出没」し「ベンチ等に汚物が見られる時もある」と記され、利用客が少ないことを実感した。 構内には平日にもかかわらず、カメラを持った鉄道ファンとみられる人が数人いた。山あいの薄暗い駅を時折、スマートなデザインの山形新幹線が通過する〝新旧そろい踏み〟の光景は、不思議な印象だった。 ■前例では4年後に廃止