<箱根駅伝>兄弟競演に親子挑戦……絆というドラマ
山梨学大にはもうひとつのドラマがある。上田誠仁監督と上田健太による「父子」での箱根チャレンジだ。上田監督は順大時代に3年連続で箱根駅伝の5区に出場。2度の区間賞を獲得して、第55回大会(1979年)ではトップを奪い、総合優勝を引き寄せている。補欠登録の健太は何区で登場するのか。伝統ある箱根駅伝でも、監督と選手としての「親子出場」は一度もない。チームとして30年連続出場となる節目の年に、上田親子が初の快挙を飾ることになりそうだ。 今季から渡辺正昭駅伝監督が就任した日体大も、高校時代の絆が強いチームだ。渡辺監督は2012年度まで豊川工(愛知)の監督を務めており、当時の教え子たちが箱根駅伝の予選会で活躍。エースの離脱で揺れていた名門校の危機を救っている。なかでも、主将の奥野翔弥は、豊川工でも主将としてチームを引っ張った選手で、今季は新監督とチームのパイプ役も担った。奥野は2区に、同じ豊川工出身の富安央が4区に登録されており、愛弟子たちの走りが「シード権獲得」のポイントになる。 2011~2014年の4年間で二度の全国高校駅伝優勝を果たした世羅(広島)からは今回4名が登録された。そのなかで異彩を放つのが2年生の工藤有生(駒大)だ。高校時代は全国高校駅伝のレギュラーをつかむことができなかったものの、駒大に進学して、その才能を開花させた。1年で全日本大学駅伝の優勝メンバーになり、前回の箱根は4区で区間新。1年前には、「正直、箱根は4年間でどうにか走ることができればいいと思っていたので、こんなに伸びるとは自分でもビックリしています」と語っていたが、今では常勝軍団・駒大の立派な主軸だ。今季はユニバーシアードのハーフマラソンで5位入賞を果たして、箱根では2区にエントリーされている。 オープン参加の関東連合を含めて、210名の学生ランナーが新春の晴れ舞台へ。それぞれの「ドラマ」が詰まった箱根駅伝が間もなく幕を開ける──。 (文責・酒井政人/スポーツライター)