自宅から通える「親孝行留学」 国内大学に通いながら、アメリカ大学の学位取得
円安や欧米諸国のインフレの影響で海外留学の費用が大幅に上がる中、海外へ渡航せずに海外の大学の授業を学ぶ「国内留学」が注目されています。自宅から通える国内留学のみで、日本とアメリカの両方の大学の学位が取得できます。経済的な負担が少ないことから「親孝行留学」と呼ぶ人も。「ダブル・ディグリー・プログラム」を実施する昭和女子大学の様子を紹介します。 【写真】「日本とアメリカ、2つの世界を行き来しているよう」…校舎の様子は?
米国大学を「敷地内」に誘致
現在、多くの大学で導入されている「ダブル・ディグリー・プログラム」は、日本の大学に入学後、一定期間、海外の提携大学で学び、双方の大学の学位を取得する制度です。本来、日本と海外の大学で学位を取るためには、それぞれの大学に4年間在籍する必要がありますが、ダブル・ディグリー・プログラムでは、提携大学との単位互換制度(相手方の大学で取得した単位を、一定の条件下で自大学の単位としても認める制度)により、4~6年という短い期間で2つの大学の学位を取得できます。 昭和女子大学では、大学の敷地内に誘致したアメリカのペンシルべニア州立テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)との協定締結により、「海外渡航なし」のダブル・ディグリー・プログラムを実施しています。同大学は、国際学部やビジネスデザイン学科の学生を対象に、中国、韓国、オーストラリアの協定大学とのダブル・ディグリー・プログラムも提供しており、その中で唯一、国内留学で修了できるのがTUJのプログラムです。
渡航なしでも目的達成
昭和女子大学の坂東眞理子総長は「TUJのダブル・ディグリー・プログラムは、経済的な負担が少ないことも大きな魅力。『親孝行留学』と私は呼んでいます」と話します。アメリカの大学は学費が非常に高く、日本の公立大学にあたる州立大学でも年間300万~600万円かかります。現地で暮らしながら大学に通う場合は、学費に加え、住居費や食費、渡航費も必要です。 TUJのダブル・ディグリー・プログラムには、TUJ留学中の授業料に、昭和女子大学の学費とTUJからの奨学金を充当する枠が年間12人設けられており、この枠に入った学生は昭和女子大学の4年半~5年間の学費のみで、双方の大学の学位を取得できます。また、通常のアメリカ留学で必要なビザ申請の手続きがいらないことや、治安に対する心配が少ないことなども、国内留学ならではのメリットです。 「留学=海外での生活や現地の人たちとの交流」という構図には当てはまらない国内留学ですが、坂東総長は「留学の目的によっては、海外渡航は必須ではない」と言います。 「教養としての海外体験が目的ならば、外国で生活し、そこで暮らす人たちと触れ合うことも大切でしょうが、海外の大学で学び、卒業するというダブル・ディグリー・プログラムの目的は、海外大学の専門・教養科目を履修し学位を得ることです。海外渡航が必要かどうかは、留学の目的に即して判断すればいいのです」(坂東総長)