「エリートばかり出世する企業」ほど衰退していく皮肉な理由
社長と社員の対話会は、無意味な「裸の王様の巡業」
2つ目は、アウトプットだけを見ていて、プロセスを見ていないパターン。成果だけを見て満足し、その成果が特定のメンバーの孤軍奮闘によって無理に出されたものであるといった、生産プロセスのひずみに気がつかないケースです。アウトプットを支えていたメンバーが離脱し、アウトプットが出なくなって初めて組織の課題に気がついても遅いのです。 3つ目は、自社の神話化。「自社だけは特別である」「この会社には優秀な人材しかいない」と思い込み、受け継がれてきたやり方に固執するパターンです。自社のカルチャーや「〇〇WAY」といった言葉がもてはやされ、「自社の方法論こそ至高である」と思い込んで心理的な鎖国状態をとってしまうと、優秀だった組織もやがて凡庸な組織へと転落していきます。 4つ目は単純な不勉強です。経営者同士のインナー・サークルでしか情報の流通がなく、しかも話すのはゴルフのことばかり、といったパターン。 5つ目は、裸の王様化。権力を持った相手には、誰も本質的な指摘をしてくれなくなります。名実ともにワンマンの企業もあれば、「社員と経営者の対話会」といったものを開催し、表面的な雑談に終始しているだけにもかかわらず、対外的には「風通しの良さ」をアピールして満足しているパターンもあるでしょう。 経営層は、危機感を持って組織マネジメントを体系的に学びましょう。「自分は様々な経営者から学んでいる」と豪語している経営者こそ、最も危険です。「今までと違うことを学ぶ」をしないと、むしろシングルループ学習を回しているだけだからです。 同じようなことを同じ人から学んだところで何も変わりません。 昨今の研究でも明らかになってきましたが、「心理的安全性」の先行要因は、「謙虚なリーダーシップ」と言われる資質です。簡単に言えば、自分の知識や能力の限界を認め、何からでも誰からでも学ぶ姿勢が大切であるという話です。 ただし、経営者だけが理論を学んでも、「組織は小宇宙の集合体」であるので、大して会社は変わりません。なぜなら、各小宇宙を見ている管理職内での「共通言語化」が必要だからです。 ここまで、組織が衰退するメカニズムについて解説してきました。次回は、成長し続ける組織であるためのマネジメントについて考えてみましょう。
坂井風太([株]Momentor代表)