「エリートばかり出世する企業」ほど衰退していく皮肉な理由
メンバーにとっての組織=上司がつくる小宇宙
では、そうした組織の硬直化を防ぎ、メンバーがダブルループ学習を回しながら活躍し続ける組織であるためには、どうしたらいいのでしょうか。 組織の機能不全は、経営、マネジャー、メンバーそれぞれの次元で起こります(上図参照)。 まず重要なことは、経営陣や中間管理職層が、組織理論や組織マネジメント理論をきちんと把握しておくことだと私は考えています。そうでなければ、起きている「現象」が、今後組織にどういうインパクトをもたらすかを予測できないからです。 一方で、経営者や中間管理職層が組織マネジメントの理論を学んでいれば、「最近組織が硬直化しているね→それはダブルループ学習が阻害されているからだね→それは心理的安全性がないからだね→それは心理的柔軟性が失われているからだね→じゃあこういう方法で解決できないか」と、共通言語を用いた議論ができるようになります。 しかし、組織理論の重要性は、特に経営層にほとんど届いていない、そもそも組織の課題に気がついていない、というのが事実です。その理由にも、いくつかのパターンがあります。 1つ目は、小宇宙理論。組織というものは、小宇宙の集合体で、視界は自分がいる小宇宙に限定されます。ですから、自分の周りの人がやる気満々に見えている場合は、組織全体がそうだと勘違いしてしまうのです。 ただし、経営者の場合は、視界に入っている相手も、やる気があるように「見せているだけ」、ということもあるでしょう。 この小宇宙理論は、マネジャーやメンバーの組織に対する認識にも当てはまります。組織はマネジャーがつくる小宇宙の集合体です。言い換えれば、「組織の実体」は、マネジャーがそれぞれの小宇宙の中でつくっているものなのです。 ですから、会社全体としては硬直化した中にあっても、上司とそのチームの士気が高ければ、メンバーは「うちの会社は士気が高い」と感じているでしょう。 逆に、「会社への不満や不信感」は、「上司への不満や不信感」が貫通したもの。現場の課題を解決しないどころか感知すらしない経営層や人事に対しては、メンバーは不信感を募らせていきます。 だからこそ、ミドルマネジャーを、「中間管理職」ではなく、「中核管理職」として、しっかり機能させることが、組織運営のためには重要なのです。