「高齢者の逆走運転」が起こるメカニズム。“衰えに無自覚”であることの危険
根拠のない能力の過信やプライドの穴にはまってしまう高齢者
「また、高齢者にありがちなのが『今まで大丈夫だったから今後も間違えることはない』『高齢者の能力は低下するが、自分だけは例外である』といった、根拠のない能力の過信やプライドの高さに由来する認識のバイアスです。 実際にそんな全能者が存在するはずもなく、現実では加齢によって能力は低下していき、当然のようにミスも多くなっていきます。 しかし、過信やプライドの穴にはまってしまった高齢ドライバーはミスをしてもミスを決して認められず、開き直ってミス自体がまるでなかったようにふるまったり、言い訳をして取り繕ったりする行動に走ってしまいがちなんです。 そうすると、最初は些細なミスでも放置することで大きな事故につながってしまったり、取り繕う時間が長ければ長くなるほど被害も甚大になってしまいます」 また噂によると、なかには逆走後も悪びれず「標識がわかりづらい」などとクレームをつける「逆走逆ギレ老人」も存在するらしい。 高齢者でなくとも逆走は若い人にでも起こりうることであり、実際には日ごろから安全で適切な運転を心がける優良高齢ドライバー諸兄も数多くいるなか、こういった刹那的な危険老人が悪目立ちしてしまうのは非常に残念なことである。
逆走ドライバーに遭遇したら、どう対処すればよいのか?
そういった逆走に、われわれはどう対処すればよいのかだろうか? 「前方から逆走車が走行してきたら、パニックにならず落ち着いて避けてください。高速道路のすれ違いは相当なスピード感です。そして、回避後は通報を心がけたいのですが、運転中の携帯操作は危険ですので、同乗者からの110番通報か、安全なパーキングエリアからの110番通報、もしくは非常電話での通報をお願いしたいです」
逆走ドライバーに対しての社会的な試み
こういった逆走に対して、行政などはどんな対策を講じているのだろうか。また、今後どんな対策が必要になってくるのだろうか。 「国土交通省やNEXCOなどは逆走防止のために何年も前からICやJCT周りの各種交通表示を『逆走禁止』『とまれ! 逆走です』といったものにするなどの改善を試みていて、一定の効果が認められています。 しかし、交通表示はただ数が多ければよいというわけではありません。高齢者にわかりやすいシンプルな交通表示を確立するのは、非常に困難なことです。 しかも、標識に書いてあることを自分事だと認識できるかどうかにも問題もあります。例えば、逆走中の高齢ドライバーが「逆走中」という標識を見ても『ほう、この辺りは逆走するやつがいるんだな』ぐらいの認識で終わってしまう恐れも十分に考えられるのです。怖いことですが……」