開封後のお好み焼きミックスでアナフィラキシー!? 日常に潜む意外なアレルギーのもと(専門家が監修)
アニサキス
寿司や刺し身を食べてから数時間後、のたうち回るような激しい腹痛に襲われる…。この悲劇は、サバやアジやカツオなどに潜む寄生虫アニサキスの幼虫によるもの。生きたアニサキスが胃壁から侵入しようと試みるため、胃痛や嘔吐などの辛い症状が生じるのだ。これを「胃アニサキス症」という。 胃アニサキス症の他にも、アニサキスのタンパク質がアレルゲンとなり、IgE抗体が作られてじんましんやアナフィラキシーを起こす場合もある。これがアニサキスアレルギー。近年、このIgE抗体が胃アニサキス症に関わるという説も出ている。 アニサキスは十分に加熱や冷凍すれば死滅するため、それで胃アニサキス症は避けられる。だが、アニサキスのアレルゲンには加熱や冷凍に強いものがあり、生食以外でもアレルギー症状が出ることもあるから厄介。
お好み焼きミックス
パンケーキやお好み焼きを食べた後、アナフィラキシーを起こすことがある。これがいわゆる「パンケーキ症候群」。日本ではその多くはパンケーキよりもお好み焼きで起こる。パンケーキ症候群は厳密には食物アレルギーではない。 問題なのは、新品のお好み焼きやパンケーキの素を開封後、室内に常温で数か月間放置してから再び使用すること。犯人(アレルゲン)は、室内のハウスダストなどに生息しているコナヒョウヒダニなどのダニだ。密封が甘いと容器内に入り込み、常温&栄養豊富な環境内で繁殖。それと知らずに口にするとダニアレルギーを引き起こす。 お好み焼きやパンケーキの素を開封したら、完全に密閉できる容器に収めて冷蔵庫で保管し、できるだけ早めに使い切ろう。
コナヒョウヒダニの繁殖数
パンケーキ症候群を起こしやすいコナヒョウヒダニを、さまざまな粉体食品に入れて26.6度、湿度88%で繁殖状態を調べた。お好み焼きやパンケーキの素のように小麦粉を多く含む食品で爆発的な繁殖が見られた。
取材・文/井上健二(初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売)