異例の短縮夏休み──子どもの学習の遅れや心身の健康、どう保障する【#コロナとどう暮らす】
例えば、夏休みには5年生の宿泊行事である林間学習が2泊3日で予定されていたが、中止が決定。しかし、現在の4年生と来年合同で行うことを決め、「今年辛抱したら、来年楽しいことが待っているよ」と伝えると、児童も納得したという。また運動会は、市規定の土曜授業の枠を使って実施することにし、特別な練習をせず授業の延長線上の内容にすることにした。保護者には、マスク着用や消毒などを徹底して「授業参観」できることを説明した。
また岡田校長は、教員たちには授業の進め方を工夫することを求めた。 「今までのような起承転結型でなく、いきなり結論から入る授業があっていい。学びの効率化、指導の転換です。例えば三角形の面積の求め方なら、まず公式を示して先生から10分間説明してすぐテストをする。理解できた子はどんな三角形でも二つ合わせれば平行四辺形になるかをグループで調べ、わからない子には先生が個別にもう一度説明するといった具合です。枠組みを先に知って興味を持てれば、理解も早くなり、楽しいですよね」
災害も多い日本 学び止めない工夫を
さらに岡田校長は、そもそも夏休み短縮のような急場しのぎの対策だけでなく、学習のあり方を大きく変えなければおかしいと唱える。 「感染症だけでなく災害も多い日本では、学びを長期間止めることのない方法を作っておかないといけない。学校に来て教室で勉強するという形にこだわらず、オンラインでの自宅学習を含めていろんな学び方があるべきです。(児童生徒1人1台の端末や高速通信ネットワークを整備する)『GIGAスクール構想』のような日本が遅れていた分野に予算がつくという意味では、今回ようやく追い風が吹いたと感じます」 同校では夏休みを短縮して行う授業について、校長の裁量で、児童が希望すればオンラインでの参加を選択できるようにできないかと市教委に交渉している。さらに今後は、保護者懇談会もオンラインを選択できるようにする方針だ。
休みを削ってまで教室で勉強、いいのか
前出の天笠特任教授は、今回の休校と夏休み短縮を含めた対応について、「基本的には教委の指示待ちで、他と足並みをそろえる校長が多いでしょう」と見解を示した。 岡田校長も「多くの学校では夏休みを削っていつもどおり登校させて授業をやることになると思う」としつつ、「それは違うような気がしている」と指摘して、こう述べる。 「夏休みは本来、学校を離れて自分が追求したいことをできる機会です。一つの活動に没頭することによって勉強する面白さを知ることができれば、人間としての学ぶ意欲につながり、学習指導要領が掲げる『生きる力』になる。そんな休みを削ってまで教室で勉強させるのがよいのか。学校教育とは子どもたちが幸せに生きていけるためのもので、学習指導要領にあることを覚えさせることを目標とはしていません。そのことを見つめ直す機会を、我々はコロナを通して与えられているのではないでしょうか」 秋山千佳(あきやま・ちか) ジャーナリスト、九州女子短期大学特別客員教授。1980年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。記者として大津、広島の両総局を経て、大阪社会部、東京社会部で事件や教育などを担当。2013年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』『ルポ 保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアル』『戸籍のない日本人』。2匹の保護猫と暮らす。 [写真] 撮影:長谷川美祈 写真監修:リマインダーズ・プロジェクト 後藤勝