深刻化する水害、損害保険料は値上げへ――リスクある地域は大幅にアップするのか?#災害に備える
松岡市長自身もこの豪雨の被災者だった。築数十年という木造の自宅は、高さ5メートル、2階の天井まで泥水に浸かった。しかし、災害対策の陣頭指揮で2週間近く市役所に張りつき、寝泊まりしていたので、自宅の対応は妻に任せっきりだった。 「戻ってみると、家じゅう泥だらけ。家電や家財はすべて処分し、家も解体となりました。もちろん我が家だけではありません。市内のいたるところが泥だらけの状況でした。現在、いわゆるみなし仮設で、借家に住んでいます」
行政が保険料を助成
あれから2年が経過し、罹災証明を出した約3400世帯のうち74%は支援を得て、新たな生活を始めているという。人吉市は現在、国や熊本県、球磨川の流域にある市町村とともに、「緑の流域治水」という取り組みを進めている。流水型ダムのほか、普段は水田だが、大雨の際に一時的に雨水をためる「田んぼダム」などで球磨川流域全体の総合力での治水安全度を高め、災害リスクを下げようという取り組みだ。
と同時に、そうした公的な水害対策とは別に、個人の水災保険への加入は必要だと松岡市長は指摘する。市長自身、保険に加入してきた。ただ、この先、水災の保険料率が改定されることになれば、市民の多くは負担が増す可能性が高い。ハザードマップを参照すると、市内の多くの地域が浸水や土砂崩れなどの範囲に入っている。松岡市長は損害保険の一定の値上げはやむを得ないと理解を示す。 「現実として、大規模な水害が頻発している状況を踏まえると、リスクの高い地域の保険料の値上げは避けられないでしょう。流域全体で水害を軽減させる対策が完了するまでの間、ご自身の財産を守るためにも、市民の方には水災保険に加入していただきたいと思います」 その上で、水災保険料の値上げには行政としても対策を考えていると言い添える。今年10月以降、水災補償が付帯した火災保険などに加入する市民や個人住宅などを対象に、保険料の一部を助成する事業をスタートするという。