都市部でも深刻化する水害 法改正でリスク説明も、変わらない不動産価格
近年、台風や集中豪雨による水害が深刻化している。2019年には台風19号などで、水害被害額は統計開始以来最大となる約2兆1800億円を記録した。このため国は、住宅販売などの不動産取引時における「水害ハザードマップ」の提示を義務化するなど、法改正に乗り出している。では、実際に被害を受けた首都圏の地域では、どんな変化が起きているのか。住民や不動産業者らを取材した。(ジャーナリスト・小川匡則/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
2年前の台風で川が氾濫
対岸に野球やサッカーの運動場を望む神奈川県川崎市高津区の一帯。ゆるやかに流れる多摩川の周辺はウォーキングやランニングの人が行き交い、多くの住宅が密集する。そんな地域が2年前、豪雨災害に見舞われた。 2019年10月に上陸した台風19号。東北や関東甲信などで記録的大雨となり、川崎市内では多摩川沿いを中心に1669件もの床上・床下浸水が発生、死者も1人出た。高津区の久地地区には多摩川に合流する川幅の狭い平瀬川が通っており、その平瀬川が氾濫した。
平瀬川には路面から高さ2メートルほどの堤防がある。だが、それを越えて水があふれ、12日午後8時頃には周辺家屋の1階はすっかり水に浸かった。被害に遭った男性(71)が振り返る。 「自分の身長(約170センチ)くらいまで浸水し、1階は全部浸かりました。電源もショートして停電。その日は不安なまま上の階で過ごしました。翌朝に水は抜けましたが、そこからの作業が大変でした。1階に入った泥をかきだしたり、浸かったものを廃棄したりしないといけなかったからです」 かきだしの作業中、けがもした。泥まみれの部屋に入った際、足を滑らせて転倒、顔を打ちつけて流血した。打ちどころが悪ければ死んでいたかもしれないと男性は言う。 「40年近くここに住んでいますが、こんな浸水は初めてでした。地球温暖化が原因だとすれば、この先も心配ですね……」