深刻化する水害、損害保険料は値上げへ――リスクある地域は大幅にアップするのか?#災害に備える
だが、こうした全国一律の引き上げを続けるのは難しい。水害リスクの低い地域に住む人にとっては不公平な制度となるからだ。すでに水害リスクが低いとされる地域では水災補償を付けない人が増え、付帯率は2015年度の73.4%から2019年度は67.8%と下がっている。 そこで、保険法や河川管理などの専門家6人で構成した金融庁の有識者懇談会は、水災の保険料率をどうすべきかについて1年間議論を交わしてきた。懇談会の報告書にもあるように、今後は保険への加入のしやすさと保険料負担の公平性などについて、十分な検討が必要になるのではと西村氏は言う。 「参考純率のうち、水災リスクについては地域別の保険料率を設定しておらず、全国一律に設定されていますが、『保険料負担の公平性』を考えれば、地域ごとにリスクの高低を考慮することも必要となります。結果として、高リスクの地域に暮らす人には高い保険料を求めることになりますが、その場合、どう地域を分けるか、どう料率の差をつけるかが重要になってきます」 今年3月末に有識者懇談会が出した報告書によると、洪水浸水想定区域図(ハザードマップ)のデータを基にしつつも、高リスクの地域の保険料が極端に高くならないように配慮するといった案が提示された。
多くの人が許容できる保険料率を
西村氏によると、これまでも地域による格差がなかったわけではないという。雪の多い地域では雪害があり、南方は台風のリスクが高い。また、建築物の構造も鉄筋コンクリートと木では、被災時のダメージも異なる。こうした地域性や建物の構造に従って、保険料率は2.11~3.43倍と細分化されてきた。 水害の保険料率の見直しについては、損害保険料率算出機構で議論されることが予想され、詳細はこれから決まる。 「高リスク、低リスク、双方から納得を得ることは難しいかもしれませんが、落としどころを探してほしいというのが業界の思いです。都市部では内水氾濫などもあり、今後、どこであっても災害が少なくなるとはいえません。そんななか、深刻なダメージを負わないために、多くの人が許容しやすい保険料率を設定できればと思います」