なぜ12気筒エンジンは魂を揺さぶるのか? アストンマーティン新型「ヴァンキッシュ」は快感以外のなにものでもない。【試乗レビュー】
これぞアストンマーティン! と叫ばずにはいられない。新開発12気筒エンジンをフロントミドに搭載した新型GT、「ヴァンキッシュ」にモータージャーナリストの小川フミオが試乗した。 【写真】 アストン新型「ヴァンキッシュ」の詳細を見る!(全56枚)
スーパーカーにおける新たなベンチマーク
アストンマーティンが、新型「ヴァンキッシュ」を2024年9月に発表。10月にイタリア・サルディニア島でメディア向け試乗会を開催した。最大のトピックスは、なんていっても、12気筒を新開発して搭載したことだ。 なんでいまわざわざ12気筒?と、何千回も訊かれたであろう質問を投げかけると、アストンマーティンでディレクター・オブ・ストラテジー&プロダクトを務めるアレックス・ロング氏は、「私たちの方針は、ハイパースポーツカーも出しますが、12気筒搭載のGTを、可能なかぎり作り続けることです」と答えてくれた。 「スーパーカーにおける新たなベンチマーク」とアストンマーティンが誇らしげにプレス向け資料に記す新型ヴァンキッシュに搭載されるのは、5204ccのV型12気筒。614kW(835ps)の最高出力と1000Nmの最大トルクを発生する。 ベースは、ヴァンキッシュと入れ替わるようにディスコン(生産中止)になったDBSの5.2リッターV12。 ただし、シリンダーブロックとコンロッドはさらに強化。さらに、シリンダーヘッド、インテーク、エグゾーストのポートを再設計。スパークプラグの位置を見直し、プロファイルを最適化したカムシャフトと、性能アップしたインジェクターを入れている。 加えて、2基のターボチャージャーも、新型ヴァンキッシュのためにチューニング。タービンの慣性を抑えることで、アクセルペダルを踏み込んだときのスロットルレスポンスが向上したという。以前のものより15パーセント回転速度が上がっているそうだ。 だが、顧客が多気筒エンジンを欲しがっているのと同時に、燃費や騒音といった規制への対応は避けては通れない。これが12気筒エンジンを再設計した理由だ。 ではこのエンジンでもって、ここから12気筒アストンマーティンの新しい時代が始まるのか。そう確認すると、ロング氏は首を横にふる。 「今回の12気筒エンジンは、ヴァンキッシュ専用です。ヴァンキッシュは私たちが手がけるGTの頂点に位置するモデルなので、その下にくるモデルに、同じ12気筒を搭載する予定はありません」 ロング氏は明言しなかったが、今後、DBXのようなモデルはハイブリッド化が進み、いっぽうで、多気筒プラグインハイブリッドシステムを高価なシャシーにミドシップしたヴァルハラやヴァルキリーのようなハイパースポーツカーも登場。そして新開発の12気筒エンジンと、アストンマーティンのラインナップは多様化が進むことになる。
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