開始まで1か月 「インボイス制度」って一体どんな制度?
「適格請求書発行事業者」の登録が必要
こうしたインボイス制度に対して、フリーランスや中小事業者からは反対する動きが相次いでいます。たとえば、「団体を構成するメンバーのほとんどが個人事業者」という日本脚本家連盟、日本児童文学者協会ら6団体は2022年11月25日、「インボイス制度の拙速な導入に反対します」との共同声明を発表。声優などのフリーランスの事業者だけでなく、税理士なども有志団体をつくってそれぞれ制度の中止を求めています。 なぜ、こうした反対の声が上がっているのでしょうか。それは、新たな税負担の発生に加えて、取引からの排除や取引先からの値下げ圧力が強まる可能性が予想されるからです。 事業者がインボイスを発行するためには、所轄の税務署で「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」の登録を受ける必要があります。ここでポイントとなるのは、登録できるのは消費税の課税事業者のみであるという点です。現在、課税売上高が1000万円以下の小規模事業者は、納税事務負担を軽減するなどの理由で消費税の納税義務が免除されています。しかし、消費税の免税事業者のままではインボイスを発行できないため、インボイス発行事業者の登録を受けると、今度は新たに消費税の納税義務が生まれることになります。 一方、フリーランスや中小事業者に仕事を発注する側の課税事業者は、インボイスではない請求書を受け取ると消費税の負担額が多くなってしまいます。このため、「発注側がインボイス発行事業者との取引を優先して免税事業者との取引をやめてしまったり、免税事業者に対して消費税に相当する金額の値下げを要請したりする動きが強まるのではないか」とインボイス制度に反対する側は懸念しているのです。 財務省は、インボイス制度の導入による消費税の増収効果を約2500億円と予想しています。つまり、課税事業者が増えると見込んでいるのです。同省の見込みどおり、免税事業者は従来通りの取引を続けてもらうために、消費税の納税義務が免除されるという立場を捨てざるを得ないのでしょうか。 同省主税局税制第2課の担当者は「消費者相手に商売をしている事業者については、登録の必要はないのではないか」と話します。消費者に限らず、取引先の事業者によっては、インボイスの発行を求めないケースもあるかもしれません。 担当者は「取引先が免税事業者に対してインボイス発行事業者になるよう求めるケースがある一方、ならなくても構わないと呼びかけるケースがあるのも承知している」とした上で、インボイス発行事業者になり税負担が大きくなった場合「負担割合の調整について、ぜひ取引先と交渉をお願いしたい。また、われわれは免税事業者を不当に扱わないよう、下請法や独占禁止法などの法令を遵守するよう各社に要請しており、仮に法律が守られない場合は対応を検討する」と話しました。 内閣官房が2020年2~3月に行った調査によると、本業として業務を行うフリーランスのうち、年収(この調査の場合、売上高から必要経費などを差し引いた所得を差す)が1000万円以上の事業者の割合はわずか5%ほど。このことから、調査の時点ではほとんどのフリーランスが免税事業者であったことが推測されます。