父はU-18で指導者、祖父は高校の総監督 “サッカー一家”だからこそ抱く夢「呼ばれるように」
東北学院2年生 DF壱岐翼の父は福岡U-18のヘッドオブコーチングを務める
37年ぶり5回目の高校サッカー選手権出場を果たした東北学院(宮城)は第103回前項高校サッカー選手権の1回戦、ニッパツ三ツ沢競技場で奈良育英(奈良)と対戦し、3-1で勝利した。この試合で、東北学院で唯一2年生として先発出場していたDF壱岐翼は、自身のバックボーンに苦労しつつも、それを乗り越え夢を追い続けている。 【トーナメント表】「死のブロックだ…」103回全国高校サッカー選手権の組み合わせ一覧 前半7分にMF佐藤成真の直接FKで先制する好スタートを切った東北学院だったが、その後は奈良育英の攻撃に苦しめられる。前半アディショナルタイムに試合を振り出しに戻されたが、それでも最終ラインの選手たちが身体を張った守備を見せ、最少失点に抑えることができた。後半7分には準備をしてきたセットプレーから、キャプテンのDF阿部幹大がヘディングでゴール。試合終了間際にもMF佐々木智貴がカウンターからGKまで抜き去り、ダメ押しの3点目を決めた。 82年度大会以来、実に42大会ぶりとなる選手権での勝利を呼んだのは、前日の1時間半にも渡ったミーティングだったのかもしれない。「僕もずっと涙だった」と言う橋本俊一監督は「昨日のミーティングで1人1人、3年間の悔しかった思いとか、楽しかったことを話して、みんな全員で泣いたんです。そういう話し合いをしてチーム一丸となって今日の試合に臨めたことは、気持ちのこもった今日の1つ1つプレーにつながったと思います」と、試合後のミックスゾーンでも目を潤ませた。 この試合、唯一2年生で先発出場していた壱岐も、試合中に決定的なシュートブロックをした選手の1人だ。試合終盤まで右サイドで上下動を繰り返し、足のつる選手が増えてきた中でも精度の高いクロスをゴール前に供給して存在感を放った。「自分の強みはスタミナとクロスなので、本当にそこだけは徹底してやってきました」と言う壱岐もミーティングで熱い思いがこみ上げたと言う。 「自分も泣くつもりはなかったんですけど…、僕はお父さんが(アビスパ)福岡U-18の監督をやっていて、おじいちゃんが東北学院の総監督をやっていたんです。いろんなプレッシャーがあって『あの人の孫だから』『あの人の子だから』って言われて周りと距離があったんです。けど、練習試合やリーグ戦で得点とかアシストをして結果が出るにつれて信頼してもらえて。そこからいろいろなコミュニケーションを取って、仲良くなっていけました。そういうことも思い出して『先輩のために一歩を出そう』『先輩のためにクロスを上げよう』『先輩のために、応援してくれる人のために走ろう』と、本当に自分のためではなく、見てくれているすべての人にという思いでシュートブロックもそうですけど、足を伸ばしましたし、昨日のミーティングがあって、今日はみんな身体を張って守れたと思います」