「60代管理職」はほぼいない…日本企業「中高年社員のモチベーション低下」という大問題
現場で活躍し続けることが求められる時代に
それにしても、なぜ日本企業はその人の持つ能力の如何にかかわらず、ここまで厳格に年齢によって一律に役職を引き下げるのか。企業人事の視点に目を移せば、そこにはいくつかの事情が存在する。 日本企業が厳格な年齢管理を手放さないその理屈を追っていったとき、まず直面するのは、日本社会が少子高齢化に直面するなか、企業においても社内の年齢構成のバランスが崩れているという事実である。 総務省「労働力調査」から日本全体の雇用者の年齢分布をみると、ここ数十年で社内の年齢ピラミッドが大きく崩れている様子がうかがえる(図表1-15)。これは日本全体の雇用者数の総数であり、なかには創業が新しく若い人が多い企業なども存在するが、20代や30代の社員が減少して中高年が増えているという現象は、平均的な日本企業の多くが直面している課題となっている。 管理職とは、複数人の部下を管理するために就く仕事であるから、当然に少数精鋭でなければならない。しかし、多くの企業で中高年が急速に増えていくなかで、現場で顧客の最前線に立って成果を生み出すプレイヤーが不足し、管理だけを行う人材へのニーズが低下している。そのギャップが多くの企業で顕在化しているのである。 年齢構成のひずみの拡大に応じて、企業としても役職適齢期を迎えている中堅層を十分に処遇しきれなくなっている。これまで企業のために尽くしてくれた従業員に対して職位で報いることができないということになれば、中堅層のモチベーション維持に困難が生じる。 定年前の中高年のモチベーションの低下が問題視されて久しい。しかしその一方で、近年では一社員として現場で利益を上げ続けられる社員であれば年齢にかかわらず確保したいというニーズも、企業内において急速に高まっている。 将来的に団塊ジュニア世代が定年を迎え、その多くが非戦力化してしまうようであれば事業の現場は成り立たなくなってしまう。企業としては、比較的年齢が若い社員の層が薄くなってきているなかで、非管理職として現場で活躍し続ける社員を増やしていかなければならなくなっているのである。