なぜ琉球ゴールデンキングスがイタリアへ?…Bリーグ初の「欧州遠征」が示す“日本バスケの現在地”
■「欧州遠征」が持つ意味
今回琉球が対戦したトラパニ・シャークは積極的な補強をしていることもあり、イタリア、ドイツの代表経験者や元NBA選手を多く抱えていた。試合をすることこそ叶わなかったが、パルチザン・ベオグラードにもパリ五輪で銅メダルを獲得したセルビア代表のほか、ドイツ代表のイサック・ボンガやフランス代表のフランク・ニリキナなど著名な選手も多く所属していた。 10日にあったBリーグの理事会後、琉球のイタリア遠征に対する所感を聞かれた島田慎二チェアマンが「代表選手は海外のトップ選手と戦って意識が高まることがありますが、クラブが外に出ていくことにより裾野が広がり、Bリーグのクオリティーアップにつながる。とてもいいことだと思います」と言ったように、クラブに所属しながら個々の選手が強豪国の代表クラスと対戦できることは、日本のレベルの底上げにつながるだろう。 欧州に関しては、ドイツが初優勝を飾った昨年のW杯は8強のうち6カ国、今夏のパリ五輪も金メダルを獲得した米国以降はフランス、セルビア、ドイツと4強のうち3カ国を占めた。一対一の比重が大きいNBAとは異なり、個々の選手が優れた状況判断をして質の高いチームバスケットを目指す欧州のスタイルは、身体能力の高い選手が多くない日本にとって学びも多いはずだ。 島田チェアマンによれば、海外からの注目度の高まりと比例して、Bリーグには強豪国や強豪クラブから大会参加などのオファーがリーグ、クラブに対して「いっぱいきている」という。既にプレシーズンでの交流が増えている韓国KBLやオーストラリアNBLなどのクラブとは異なり、長距離移動が必要となる欧州はコストの問題も大きいが、今回の琉球を皮切りに交流が増えていく可能性は十分にある。興行収入を見込み、欧州の強豪を日本に呼ぶクラブも出てくるかもしれない。 海外からのオファーについて、島田チェアマンは「海外からレベルの高い選手がBリーグに来ていて、エージェントとのコネクションが強まると、派生してこういう動きが出てくる」と分析したが、その逆もまた然り。 今シーズンも群馬クレインサンダーズにドイツ代表のヨハネス・マーティン、横浜ビー・コルセアーズにエストニア代表のマイク・コッツァーなど力のある選手が移籍し、既に欧州の選手にとっても日本が魅力的に映っていることがうかがえるが、欧州クラブとの交流が深まれば、Bリーグへの有力選手の流入がさらに加速することもあり得る。 リーグやクラブの事業規模、人気、競技力など、すべての面において「NBAに次いで世界第2位になる」という野心的な目標を掲げているBリーグ。その目標を成就させるためには、現時点で世界第2位との見方が強いユーロリーグは避けては通れない。1945年に創立したパルチザンのように、欧州には歴史が深いクラブも多い。今回の琉球のように現地で交流を深めることは、その国のバスケ文化を学んだり、自らのクラブ自体や本拠地とする地域を世界に知ってもらう意味でメリットは多く、引いてはBリーグ全体の価値向上にもつながっていくはずだ。
■トーナメント試合結果
<1回戦> パルチザン・ベオグラード 96-94 デルトナ バスケット トラパニ・シャーク 78-69 琉球ゴールデンキングス <3位決定戦> デルトナ バスケット 80-71 琉球ゴールデンキングス <決勝戦> トラパニ・シャーク 61-89 パルチザン・ベオグラード
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