禅に学ぶ「イライラが止まらない」ときに効果的な呼吸法
悪感情は「おなかにとどめる」
三毒を撒き散らして後悔しないよう、「まずい」と思ったら丹田呼吸です。禅では、感情を「おなかにとどめて、頭にあげない」という言い方をします。 例えば、誰かの言葉で怒りや悲しみの感情が湧いたとします。そのとき「こんなにひどいことを言うこの人は、自分に対して悪意を持っているに違いない。許せない、ひどいめにあわせないと、こちらも納得できない」という具合に、気持ちに収拾がつかなくなるのが、感情を頭にあげるということです。 中国の古い格言に「綸言(りんげん)汗の如し」という言葉があります。出た言葉と汗は後で取り消すことができません。感情にまかせて罵詈雑言の類を口にすれば、人間関係に傷がつき、最悪の場合、そこで縁が切れる恐れもあるでしょう。感情をおなかにとどめる、つまり、さらりと受け流すことができれば、そうした事態を回避できます。 もう一つ、感情をおなかにとどめるのに、いい方法があります。 それは大本山總持寺の貫首をされていた板橋興宗禅師さんの教えで、心のなかで「ありがとさん、ありがとさん、ありがとさん」と3回唱える、というもの。 どのような感情も、一瞬大きく揺さぶられることがあっても、呼吸を整えていれば、じきに平静さを取り戻します。その時間を稼ぐための、ちょっとしたおまじないが「ありがとさん、ありがとさん、ありがとさん」です。
枡野俊明(曹洞宗徳雄山建功寺住職)