独自大会V狙う大阪偕星に夢を追う“ドミニカン留学生“…「甲子園から日本のプロ野球、そしてメジャーへ」
一方の右腕・ワーネルの素質もなかなかだ。遠投が100メートルの地肩に加え50メートルを5秒8で走る抜群の身体能力がある。ドミニカでは遊撃手で投手に転向したのは、来日してから。まだ未完の投手だが、すでにストレートのMAXは141キロをマークしている。 173センチ、70キロと小柄だが、手足の長さを生かしたピッチングが特色で、自己流で投げ始めたナックルカーブの軌道は“えげつない角度“で曲がっていた。今大会では登録メンバーから外れたが、山本監督の期待も大きい。 「ワナはやっと投手らしいフォームになった。慣れてくれば、大化けする可能性はある」 2人が来日したのは2018年11月。東京で日本語を学びながら入学準備をし、大阪偕星学園の門をくぐったのが19年6月だった。学校側はサッカー部に韓国人留学生を迎え入れるなど積極的に国際交流を推進しており、今回も、その一環。日本との友好関係を深めようとしていたドミニカ共和国と考えが一致し、大使館が間に入って、初めての野球留学が実現した。 2人は来日直後、初めて見る雪に驚き、満員電車に戸惑いながらも徐々に日本の生活に慣れていった。大阪に移ってからは初めての寮生活。「共同生活はめちゃ大変です。いろんなルールがある。規則を学んだ」とダビットは言う。日本の食事に話が及ぶと、「一番好きなのは焼肉。たまにしか食べられませんが」と笑わせた。ちなみにダビットは8人兄弟でワーネルは7人兄弟。母国のドミニカも新型コロナ禍にあり、「両親とは時差を気にしながらも毎日、連絡を取っています」という。 ドミニカ共和国は、言うまでもなくメジャーを席巻している野球王国である。第3回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を制した。2人の説明によると、国内では、年代別にリーグが分かれ、リーガ(6歳~12歳)、プログラム(13歳~16歳)、アカデミー(16歳~)の3つがある。アカデミーはメジャーリーグの各チームが持つ下部組織で才能ある選手しか契約できない。広島も1990年から現地に「カープアカデミー」を持っており、今年のブルペンを支えるフランスアや開幕戦で5番を打ったメヒアもドミニカのアカデミー出身だ。