殴打に電気ショック…水を求めると小便をかけられた イスラエル軍拷問の実態、ガザ市民が証言
イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで、軍はハマス戦闘員のほか、多数の民間人も拘束し、イスラエル領内の軍拠点に連行している。「身体に電気棒を当てられた」「小便をかけられた」…。軍は拘束を巡る情報を公表せず、詳細については不明な点が多いが、解放された市民への取材からは軍兵士による「拷問」の実態が浮かぶ。国連からもイスラエル政府に対し「拷問の疑い」を調査するよう求める声が上がる。イスラエル軍は「不当な行為はない」との主張に終始するが、イスラエル軍拠点では一体、何が起きているのか。共同通信ガザ通信員、ハッサン・エスドゥーディーが報告する。(敬称略。翻訳、構成は共同通信エルサレム支局長 平野雄吾) 歴史が生んだ「世紀の難問」…イスラエル、パレスチナの争いはなぜ始まった 基礎から解説
▽裸にされて連行 ガザ南部ラファ。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校でアムラン・アブワルダ(54)は数センチにわたる左腕や背中の傷痕を見せ、振り返った。 「ハマス戦闘員がどこに隠れているのか、何度も尋問された。『知らない』と答えると、身体に電気棒を当てられ、素手や銃床で殴られ、蹴られた」 アブワルダは昨年11月19日、イスラエル軍兵士に拘束された。ガザ北部から南部へ子ども6人を含む家族と徒歩で避難中、主要道路に設けられた軍の検問所にさしかかった時だった。 「1人だけ呼ばれ、家族の前で裸にされ目隠しされた。プラスチックの手錠をかけられ、車でどこかへ連れて行かれた。動けば動くほど、プラスチックの手錠が腕に食い込むようになった」 ハマス関係者の近くに住んでいたことが原因とみられるが、拘束理由は明らかにされていない。連行先はイスラエル領内とみられ、軍拠点に着くと、下着を脱ぎ、おむつをはくよう命じられた。トイレに行かせないためだとみられている。アブワルダを含め、百数十人のパレスチナ人が同じ拠点にいたという。
食事はわずかなパンに、いちごジャムなどだった。裸にされる時間が長く、寒さのあまり毛布を求めると、ぬれた毛布を渡された。「イスラエル兵は十分な水を与えず、私たちは常に喉が渇いていた。多くのパレスチナ人が水を求めては殴られた。『これでも飲め』と笑いながら兵士に小便をかけられたパレスチナ人もいる」 尋問室にいたのは兵士4人。質問に対し、納得のいく答えが得られないと、兵士は次々とアブワルダを殴り、電気棒を当てた。腕や背中のほか、アブワルダの脚には直径1センチほどの穴のような傷痕も複数ある。 アブワルダは悔しそうに続けた。 「殴られ、電気ショックを受けた後、遺体収容袋に押し込まれ、その中で眠るよう強要されたこともあるし、おむつも5日間、取り換えが認められなかったこともある」 ▽「性的暴行の脅し」報告 スイス・ジュネーブ拠点の非政府組織(NGO)「欧州地中海人権モニター」は昨年10月の戦闘開始後、イスラエル軍に拘束された経験のあるパレスチナ人について、証言を基にした報告書を発表している。2月公表の報告書では、殴打や犬による攻撃のほか、強制的に裸にさせたり、食事を与えなかったりしていると非難、セクシュアルハラスメントや「性的拷問への脅し」もあったとしている。