ステージから科学と社会、人と地域をつなぐ――サイエンスエンターテイナー・五十嵐美樹さん
―「サイエンスエンターテイナー」というジャンルを確立した経緯は。
大学4年生になってキャリアを考えたときに、科学者になるかダンサーになるかの2択しか知りませんでした。でも、私は科学もダンスも同じくらい好きなのに、どちらかを諦めて選ぶしかないってずっと悩んでいて。ハローワークで「科学・ダンス」と調べても出てこないわけです。
そんなときに「ミス理系コンテスト」という、科学を伝えて表現するコンテストの存在を知りました。ステージ上で理科の問題を解いて、解説して、最後に特技を披露するという、科学を通じて自分を表現できる場があって。私は当然、ヒップホップダンスをしたのですが、ステージに立ったときに自分の居場所だと思えました。私の大好きな科学とダンスをしたら、みんなも喜んでいるみたいな感じで。自分が感動を覚えてきた「科学と社会」との接点で、人に喜んでもらえたという一番の原体験になりました。
アニメなどの組み合わせ突破口に日本の存在感高める
―これまでの活動が評価され、『Falling Walls Science Breakthrough of the Year 2022(※)』サイエンスエンゲージメント部門で世界の20人にも選出されました。 ※毎年ドイツのベルリンで開催される国際的な科学イベント。各分野の最先端の研究成果や技術革新を表彰している。
日本で科学教育を受けられたことに、すごく感謝しました。授賞式で、いろいろな国の人と会話する中で、「えっ、そんなにサイエンスショーやっているの」とか、そもそも「サイエンスショーって何」って言われました。テレビでも科学番組がたくさんあることに驚かれて。毎週末のように科学イベントが展開される国で理科教育を受けてきたことは、普通のことではないのかもしれないとその時認識しました。
世界中の科学コミュニケーターのトップみたいな人が集まる場でしたが、自分のやっていることも評価してもらえました。最初は日本人で初めてだよといわれて、「行っていいのかな」みたいな感じもあったんです。でも行ってみたら、やってきたことをちゃんとお互いに認め合えた。だから卑下することなく、このまま自信をもって続けていこうと思うことができました。