「意地悪な言い方をすれば国民民主党って…」池上彰が“103万の壁”を国民・玉木氏に直撃【池上無双炸裂】対談前編
● 政策決定者も官僚も インフレを知らない 玉木 私は1993年に大蔵省に入省しましたが、現在、財務省の局長手前くらいになっている私の同期たちは、入省以来、デフレしか経験していないんです。だから、インフレに合わせて基礎控除額を引き上げた経験がありません。 池上 私の世代は物価は上がるものだと思ってきたけれど、今の現役世代のほとんどは、インフレに慣れていない。国民はもちろん、政策決定者も官僚も、「インフレを知らない」んですね。 玉木 私が言っているのは、何も新しい政策をやれということではない。「皆さん、昔を思い出しましょうよ」と。もちろん、以前のように毎年1万円とはいかないとは思います。どのように制度を作り得るかというのは、まさに議論しながら、いい着地点、合意点を目指していきたい。 ● 103万円の壁は 壁じゃないと思っていた 池上 106万円の壁、130万円の壁についてはどう考えますか。 玉木 反省を込めて言うと、年収の壁というのは基本的に社会保険料がかかり始める106万円と130万円の壁であって、所得税がかかり始める103万円の壁は、はっきり言って壁じゃないと思っていました。 池上 年収が103万円から1万円増えても、所得税が500円増えるだけですから。 玉木 そうです。なので社会保険料の「年収の壁」について国会で何度も質問してきましたし、ずっと取り組んできました。その結果、2年間の暫定措置ではありますが、106万円の壁についてはキャリアアップ助成金制度を、130万の壁については、事業主が一時的な所得の増加だと認めた場合は扶養から外さないという措置を導入することができました。 私も含めて政治が無視し続けてきたこの103万円の壁について、控除を拡大しようと掲げて選挙に臨んだら、そこに響いてきたのがパートさんと学生さんでした。 「時給が上がっているからあっという間に103万円の壁に達してしまう。どうにかなりませんか」と言われましたし、雇用する側からは、早いところでは9月くらいで人手不足が生じている、と。やはり控除を拡大すべきだと選挙戦の最中(さなか)に確信しました。 池上 政策には、新しい時代に即した発想が必要です。今回は「103万円の壁」に注目が行きましたが、配偶者控除のあり方など、抜本的な改革につながるような政策論争が必要です。ただ、玉木さんの古巣の財務省は反対していますよね。「税収が減る。その分の財源はどうするんだ」と。これはどうですか。