「意地悪な言い方をすれば国民民主党って…」池上彰が“103万の壁”を国民・玉木氏に直撃【池上無双炸裂】対談前編
● 民間努力で賃上げしても 税と保険料で手取りが増えない 玉木 我々は2020年の結党以来、変わらずに「給料が上がる経済の実現」を政策に掲げてきました。すみません、ここに予算委員会で使っているパネルがあるんですが……(と取り出す)。 池上 お、こういうのは私の番組でもよく使っています。 玉木 これを見れば一目瞭然なんです。1990年以降、30年にわたって給料が上がっていない。各国が2倍近く賃金を伸ばしているのに、日本だけが全くの横ばいなんです。これを何とかしないといけない。 今年の春闘で大企業や中堅企業ではようやく5%程度の賃金上昇になったのですが、民間努力で賃金を上げても、今度は税と保険料で持っていかれてしまうので、ちっとも手取りが増えないんです。 そこでもう少し政策の解像度を上げて、税と保険料の負担をできるだけ抑え、手取りを増やすことを中心に据えたいと。これは働いている方々からいろいろと話を聞く中で、「手取りが少ない」という声を多く耳にしたことがきっかけになっています。 ● 米国は取りすぎた税を 国民に返している 玉木 また、私は政策を作るときに米国をはじめとする諸外国の制度を調べるのですが、米国の場合、日本の基礎控除に当たる標準控除の額はインフレに合わせて毎年変わっているんです。インフレになって税制がそのままだと増税効果が生じるからです。 例えば1000円のものを買えば100円の消費税。これがインフレで2000円になれば、消費税は200円になりますから。そのとき、米国は標準控除を拡大して、取り過ぎた税を国民に返しているんです。これは日本でもやるべきだなと。 池上 私もテレビ番組で扱いましたが、物価が上がれば、家計の消費も上がり、消費税も増えて税収が増える。だったら、取り過ぎた分は返してはどうか、ということですね。 ● 実は日本も控除の引き上げを 戦後、何度も実施してきた 玉木 実際、物価が上がっているときは生活にかかるコストも上がっているので、それに合わせて控除額も広げて課税対象所得を小さくし、手元に残るお金を増やす必要があります。しかし日本はデフレが長かったことで、その間、控除額を一定のままにしてきました。 ところが、実は日本も戦後の右肩上がりの時代には、基礎控除、給与所得控除の引き上げを何度も実施していたんです(と、再びパネルを取り出す)。 池上 これはわかりやすいですね。1995年以降、「103万円の壁」から変化していない。 玉木 そうです。1960年代のように物価がどんどん上がっていた頃には給料も上がっていたので、毎年1万円ずつ、控除額を引き上げていました。70年代に入ると成長のペースが落ちてきたのですが、それでも2年に一度、2万~3万円引き上げてきたのですが、1995年になってピタッと止まり、デフレのまま30年経ってしまったのです。