「未来のデジタルアート」はどこへ行く? Beeple(ビープル)の中国での最新個展から探る
植物が自動で生成される新作と、気候変動へのアンサー
《Human One》のようなキネティック+NFT彫刻の新作は領域を広げており、全貌がこの南京の美術館初個展で明かされている。2024年の新作《Exponential Growth》は、20億通りの植物景観を生成できるモデルが組み込まれている。人間の創造性を自然の延長線上に位置づけ、技術による自然の再解釈を試みている。BeepleがDeji Art Museumで開催中のもうひとつの企画展「Nothing Still About Still Lifes」を見て、花というテーマに着想を得たという。 じつは「Nothing Still About Still Lifes」展では」ジェフ・クーンズ村上隆、アンディ・ウォーホル、ジェフ・クーンズらによるわかりやすい花のモチーフ以外にも、クロード・モネ、ポール・セザンヌなど近代の巨匠、ピエト・モンドリアン、ルネ・マグリットのほか、児島善三郎など古今東西のあらゆる花にまつわる絵画を集合させたコレクション展だ。とてつもない豪華なラインナップながら、100点以上のすべてがDeji Art Museumのコレクションということにも驚嘆せざるを得ない。 これまであえて意識的に美術史を学ぶのを避けていたというBeepleだが、「皮肉なもので学ぶまいとしても美術史には影響を受けている。いま、私が美術史を理解したいと思うのは、繰り返したくないからです。アーティストの役割とは、見たことのないものを作ること。歴史を知らなければ、新しくて斬新だと思っていることが、40年前に行われていたことをうっかり再現してしまう」。 そのコメントからも植物のモチーフのヒントが、コンセプト重視の方向性に聞こえてくる。 《S.2122》は、2122年の人類の未来を描いた2メートル超の回転彫刻だ。5日ごとに更新されるダイナミックな設定で、気候変動、海面上昇という喫緊の地球規模の課題に対する人類の適応力を象徴的に表現している。Deji Art Museumのコレクションだ。