オウギワシとフィリピンワシを見逃すな!鳥類の専門家が徹底ガイド 国立科学博物館の特別展「鳥」が100倍おもしろくなるマル秘鑑賞法
絶対見逃したくない超貴重展示から鑑賞スキル爆上がり法まで
三度の食事より鳥が大好きな科学ジャーナリスト・柴田佳秀氏が、国立科学博物館初の鳥類をテーマとした特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」(2025年2月24日まで開催)の見どころを解説。前編につづき後編も、柴田氏独自の視点で「こんなところに注目 !」「ここを見なくちゃ損 !」と思われる注目ポイントを展示順に紹介。大人も子どもも、初心者も鳥推しも、誰もがとことん楽しめる鑑賞法をお届け ! 【写真】わくわくが止まらない!特別展「鳥」ここがすごい 前編記事『飛べない鳥ペンギンにもちゃんと「竜骨突起」が…!鳥類の専門家が徹底ガイド 国立科学博物館の特別展「鳥」が100倍おもしろくなるマル秘鑑賞法』より続く。
ペンギンにしれっと混ざる謎の鳥
前編から引き続き、10種のペンギン大集合の展示についてもう少し。このペンギン大集合には10種のペンギンの他に、なんだか違和感満載の鳥が一羽いる。しかも、剥製標本ではなく模型なのである。じつはこれ、オオウミガラスというチドリ目の海鳥で、ペンギンとは縁もゆかりもない。それなのになぜか、ペンギン大集合に加わっている。 では、なぜここにいるのかといえば、それは元祖ペンギンだから。オオウミガラスは、北極の海にすんでいて、ペンギンという名前は元々はこの鳥のことだったのだ。その後、南半球でこの鳥に似た鳥が見つかったので、そちらもペンギンと名づけたのである。 しかし、残念なことにオオウミガラスは、羽毛や卵狙いで乱獲されて数が激減。最後の1羽は、19世紀に博物館が剥製にするために捕獲され絶滅してしまった。かくして北極のペンギンは消滅し、南極のペンギンが生き残って今に至るわけだ。したがって、世に存在する標本はごくわずかで、模型が展示されているのはそういう理由なのである。
他人のそら似には気をつけろ
動かない鳥として有名なハシビロコウも、今回の鳥展で展示されているから見逃さないで欲しい。ではどこにいるかと思えば、第5章「陸鳥と水鳥のなかま」の最後、ペリカン目のコーナーにサギやペリカンといっしょに並んでいるのだ。 ハシビロコウという名前は、漢字で書けば「嘴広鸛」。広い嘴を持つコウノトリという意味である。確かに脚が長く、見た感じはコウノトリのなかまと考えるのが自然だ。ところがゲノム解析してみると、コウノトリよりもペリカンに近いことが判明。要するにコウノトリとは、“他人のそら似”だったのである。 生きものは、収斂と言って、生活の仕方が似ていると、全く別のなかまなのに姿が似てしまうことがよくある。見た目基準で分類をすると、この他人のそら似に騙されてしまうのである。 同じようにハヤブサは、外見から考えれば、誰が見てもタカのなかまに見えるだろう。実際に研究者でもずっと誰ひとりとして疑う者はいなかったのだ。ところが、ここでもゲノム解析してみると、タカよりもインコやオウムに近いことがわかったのである。 鍵型の嘴を持ち、鋭い爪で獲物を捕らえるハヤブサが、「こんにちは」と人の言葉を真似るインコに近いなかまというのは、いくらなんでも違いすぎると思うが、同じ祖先を持つ間柄なのだそう。しかし、考えてみればニュージーランドには、ヒツジを襲う肉食性のミヤマオウムなんていうオウムがいるので、ハヤブサと関連性があっても不思議がないかもしれない。