「我慢」を続けると前頭葉の機能が低下する…老後は夫婦で別行動でもいい根拠
■一人になったときの予行演習をしておく プロ野球の選手や監督として活躍した野村克也さんは、晩年に妻の沙知代さんに先立たれると目に見えて衰弱し、その2年後に後を追うように亡くなりました。老いてなお人気の野村監督でしたが、配偶者を失った途端に弱りきってしまったのです。それだけ夫婦仲が睦まじかったともいえるでしょう。高齢者の場合、うつ状態で食欲不振になると如実に体が衰えます。孤独に対するリスクヘッジのようなことが、もしかしたらできていなかったのかもしれないとも思います。
高齢になって、現実に一人で暮らすようになる前から、孤独の楽しみ方を少しずつ覚えておくことがいいのではと思います。 たまに一人で過ごす時間をつくり、その時間を徐々に増やしていくなどしてみるのです。書斎にこもって本を読む、ユーチューブで何か動画を見る、オンラインで囲碁や将棋の対局をするなど、自分なりに一人の過ごし方を見つけてみましょう。高齢になるほど、「孤独にだけはなりたくない」「認知症にだけはなりたくない」など、予期不安的な発想が強くなります。
しかし、いざ認知症になっても初期のうちは自分では気づかないことが多いですし、重くなれば、ボケていることさえ認識できなくなります。そう考えると、本人が苦しむ時間はそれほど多くないともいえます。不安に思っていたのに、実際になってみるとそうでもない、ということは案外多いものです。 たとえば孤独の予行演習として、一人で旅をしてみるとか、ウィークリーマンションを1週間借りて一人で暮らしてみるとか。不安に思っていることが、実際にどの程度のものなのかを体感しておくと、「もしそうなったとしても大したことはない」と思えるようになります。それが、自分自身の余裕を増してくれます。
■孤独を恐れず好きな生き方をしよう 現在、一人暮らしの高齢者は、日本では670万人を超えています。孤独死や事件を起こす独居高齢者のニュースなどありますが、孤独を上手に生きている人も何百万人という単位で存在しているのです。誰にも看取られずに亡くなり、死後何日もたって発見される、いわゆる「孤独死」を恐れる人も多いですが、それは裏を返せば死の直前まで元気だった可能性もあります。 というのも、今は要介護認定を受けた高齢者であれば、ほぼ例外なく何らかの福祉サービスとつながっています。自殺などのケースを除けば、孤独死は、直前まで寝たきりにもならず、元気に生きて最期を迎えている場合もあるのです。