人気の「平屋住宅」、実は二階建てに比べて建築費が…建築家が「オール電化」「コンパクトハウス」でこだわるべきポイントを紹介
◆改めてオール電化住宅を考える 原子力発電所の稼働停止や円安、ウクライナ問題等で電気代が爆上がりしている。20年ぐらい前は「オール電化住宅はお得でエコ」と言われて人気があった。 太陽光発電の売電価格も高かったので導入後10年すれば元が取れた。お得さが魅力なオール電化だったはずなのだが、次第に売電価格は下がり、補助金も少なくなった。 そして知らぬ間に深夜電力料金まで高くなったから、安い深夜電力を利用してお湯を沸かしていたエコキュートもお得度が下がってしまった。 さらに10年を過ぎるとユニットが壊れる可能性が高くなるので交換が必要になる。構造が複雑なので本体費用も一般のガス給湯器よりも高額になる。 太陽光発電はパネル自体の耐久性は高いのだが、変換器のパワーコンディショナーが10年を過ぎたあたりで交換となることが多い。 IHクッキングヒーターは空気を汚さず、火を使わないから火災の危険は少なく、湯沸かしが速いので便利だが、導入コストがガスレンジより20万円以上多くかかる。これも故障すると交換費用は35万円前後になるだろう。 蓄電池も普及してきたが、電気自動車のように導入コストが高いことと寿命が短いことが気になる点だ。 これからは手放しでオール電化を導入するのではなく、南傾斜の屋根面積が広いとか、陽当たりの良い立地なので効率的に発電できる太陽光発電を導入するとか、高齢で火の不始末が心配だからIHクッキングヒーターにするといったように、相応の理由がある場合は導入すればいい。 基本はイニシャルコスト、ランニングコストが安い「ガス給湯器+ガスレンジ」の組み合わせでいいと思う。
◆「60ハウス」と「ぴっころハウス」 人生のB面では生き方を見直し、それまでの物にあふれた生活からシンプルに生きるのがいい。家がコンパクトになれば、自ずとその空間にフィットした生活をしようとするだろう。 ここでは、私が考案した「60ハウス(ロクマルハウス)」と「ぴっころハウス」を紹介したい。 〈「60ハウス」~二人暮らしにちょうどいい平屋〉戦後、アメリカ軍の軍人とその家族向けに建てられた洋風の平屋住宅、通称・米軍ハウスにヒントを得たアメリカンテイストのフラットハウス。 60歳前後のリタイアしたカップルの理想の住まいを想定し「60ハウス(ロクマルハウス)」と名付けた。 年を重ねても楽に暮らせるよう、廊下をなくし、車椅子になっても動ける空間となっている。南側には大きめのテラスを配置し、アウトドア・リビングのような使い方もできる。 〈「ぴっころハウス」 ~おひとりさま向けのミニマルな二階建て〉「ぴっころハウス」は、拙著『60歳からの家』で発表した、一人暮らしを想定したミニマルな二階建て住宅だ。 建蔽率が60パーセントの住宅地であれば、約45平方メートル(13.6坪)の敷地に理論上は建てることができるため、都心の狭小地にお住まいの方の建て替えにも対応できる。 小さいので建築費も他の二つより安くできる(少し前なら1000万円台前半で建てられたが、2024年現在は1500万円前後が目安だ)。 さらに小さいながらも二階建てなので、1階をお店やサロンとして使ったり、趣味のガレージとし、2階を生活ができるプライベート空間に分けて使うこともできる。 私は趣味でウクレレを弾く。一般的なものよりひと回り小さい最小サイズのウクレレをピッコロというが、「ぴっころハウス」の名前の由来は、ここからきている。 生涯未婚率は2020年時点で男性で3~4人に1人(28・25パーセント)、女性で5~6人に1人(17・85パーセント)の割合だという。 離婚やパートナーとの死別などで40~50代で一人暮らしになる人もいるだろう。一人の人生を楽しむ一番小さな相棒として「ぴっころハウス」が広まってほしい。 ※本稿は『人気建築家と考える50代からの家』(草思社)の一部を再編集したものです。
湯山重行
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