なすなかにし那須(43)が発症・緊急手術をした 「脳梗塞」の前兆・予防法を医師が解説!
すぐに病院へ行くべき「脳梗塞の前兆」
ここまでは脳梗塞の前兆となる症状を紹介してきました。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。 ■半身のしびれ、顔のゆがみ、ろれつが回らないなどの症状の場合は、救急車の要請を 脳梗塞の典型的な症状は「体の右半分、または左半分のしびれ、麻痺」です。寝違えなどで腕がしびれることがあっても、時間が経てば徐々に治っていくものです。脳梗塞や脳卒中のしびれや麻痺は、放置するとどんどん「体の片側だけに」広がります。 米国脳卒中協会では「ACT FAST」(アクトファスト)という3つのテストを行うことを推奨しています。F(Face・顔がゆがんでいる、口角が片側だけ上がらないなど)、A(Arm・両手を横に上げてしばらく経つと片腕だけ下がる。腕や足が上がりにくい、しびれるなど)、S(Speech・かんたんな言葉を発して意味は理解できるか、ろれつは回っているか、他人のことばが理解できるか)の3つをチェックし、1つでも当てはまればT(Time・すぐに)救急車を呼びましょう。 周囲の人は患者さんをあおむけに(嘔吐している時は回復体位で)寝かせ、頭を動かさないようにして体を保温しましょう。余裕があれば発症した時刻(できれば分単位で)と症状を記録し、救急隊員に伝えると治療に大変役立ちます。 ■受診・予防の目安となる「脳梗塞の前兆」のセルフチェック法 ・体の半身(右半分、または左半分)だけ麻痺が現れる場合 ・突然意識を失う場合 ・突然ろれつが回らなくなる、言葉が理解できなくなる場合
脳梗塞の前兆となる症状を予防する方法
突然人生を奪われ、深刻な後遺症に苦しむリスクが高い脳梗塞ですが、きちんと管理すれば発症リスクを下げることができます。 ダイエットを除けばどれも比較的簡単ですが「毎日必ず続ける」ことが求められることばかりです。服薬はうっかり忘れを防ぐために、カレンダー型の薬ケースに入れておく、飲む時間にアラームを鳴らすなど、工夫をするのが効果的です。面倒だからと通院や服薬を止めると、脳梗塞リスクが上昇します。 ■高血圧治療を怠らない 高血圧治療は脳梗塞や脳卒中を防ぐ最大の方法です。血圧が高いと血管への負担が増し、血管を塞ぎ、破裂する原因になります。日本では自分が高血圧であることを知らない、知っていても治療をしない人が1,400万人いると言われ、脳卒中の潜在的リスクになっています。高血圧を予防できれば、日本で発生する脳卒中を50%減らすことができる、という試算があるほどです。高血圧の改善は減塩と適度な運動が効果的で、特に「減塩」は必須です。日本人は塩分摂取が多い傾向があり、脳卒中は昔から国民病でした。まずは「ラーメンやうどんの汁を残す」「練り物、肉加工品はほどほどに」「味付けは塩分を減らし、柑橘類の搾り汁を加えて満足度を上げる」など、すぐできる方法からチャレンジしてみましょう。それでも改善しないときは降圧剤を服用します。 ■糖尿病の血糖値管理・肥満の解消 高血圧の次に脳卒中の原因になるのは、脂質異常症や糖尿病です。糖尿病の方は血管がもろくなりやすく、動脈硬化の原因になります。脳梗塞には3つの種類がありますが、肥満や糖尿病の方は特に血管の中にプラークが溜まる「アテローム血栓性脳梗塞」を発症するリスクが上がります。糖尿病の治療は長期戦です。定期的に内科か糖尿病外来を受診し、血糖値を把握する必要があります。バランスの良い食生活、適度な運動、適切な投薬で血糖値を下げることができます。定期健診で血糖値が要検査という結果になった方は、早めに内科か糖尿病外来を受診しましょう。 肥満と高血圧を併発している方は、特定保健指導を受けて実践すると、どちらも改善する傾向があります。 ■心房細動の検査と治療 心房細動とは不整脈の一種で、心臓の上部にある心房が収縮せず、ブルブル痙攣する症状です。高齢になると増える傾向があり、動悸、息切れめまい、倦怠感など自覚症状が現れることもあります。心房細動を起こすと心臓の中に血液が溜まったままになり、血栓を作る原因になります。血栓が脳の血管まで流れると、脳梗塞の中でも最も重症化しやすい「心原性脳塞栓症」を発症します。心原性脳塞栓症は脳の太い血管を血栓が塞ぐため、脳の広範囲に深刻なダメージを与えます。 心房細動による脳梗塞予防のためには血液をサラサラにする薬は欠かせません。また、異常な動きをする心筋の伝導路を焼き切る手術「カテーテルアブレーション治療」を行うことがあります。 ■禁煙 喫煙は肺がんの原因になることで有名ですが、脳梗塞や脳卒中リスクも上げます。喫煙による脳卒中リスクは男性1.4倍、女性2.0倍で、女性の方がより深刻なダメージを受けます。タバコの成分は動脈硬化を悪化させ、血管を縮める作用もあり、脳卒中を引き起こしやすくします。他の病気リスクもあるため、喫煙は今日から止めましょう。禁煙外来で禁煙補助薬を使いながらチャレンジすると、7~8割の方は禁煙に成功します。