約4億6600万年前の地球に「環」があった可能性 史上2番目の大量絶滅の原因?
■環は生物の多様化と大量絶滅を招いた?
3氏は、もし地球に環があれば、地球の気候にも影響を与えたかもしれないと考えています。環は日光を反射し、影を落とすため、夏側では日射量が増え、冬側では日射量が抑えられます。また、環から外れた天体は落下・衝突し、塵を大気中にまき散らします。これらを総合的に見ると、地球は全体として寒冷化に向かうと考えられます。 オルドビス紀には、平均気温が約8℃も下がる、地球の歴史上最大級の寒冷化イベント「ヒルナンシアン氷期」が起きたとされています。しかし、当時の大気中の二酸化炭素濃度は高かったと考えられており、温暖化の条件が揃っている中での寒冷化は大きな謎でした。環が日光を遮ったことが寒冷化の要因ならば、二酸化炭素濃度の矛盾にも説明が付きます。そして環が4000万年かけて消滅し、日光の遮断が無くなれば、地球は温暖化します。環の消滅と温暖化の時期は重なるため、これについても説明が付きます。 オルドビス紀には、顕著な生物多様性の増加や、植物の陸上進出に加え、その末期には海洋生物種の85%が絶滅する、過去2番目の規模の大量絶滅が起きたと考えられています。これらはいずれも、急激な気候変動が生物の適応を促し、あるいは適応できなかった生物の絶滅を招いたと考えることができます。今回の研究は、オルドビス紀末の大量絶滅の原因は地球の環であることを示唆しています。3氏は、気候への影響をもっと詳細に調べることで、今回示された可能性が妥当かどうかを検証できると考えています。 ところで、このような地球の環は他の時代にもあったのでしょうか? 環を形成するには、天体がロシュ限界に入るだけでなく、地球が一時的な衛星として捕獲できるように、特定の速度と角度で天体が入り込む必要があります。このような条件を満たす可能性は非常に低いため(※6)、地球の環はかなり珍しいと考えられます。3氏は、5億3880万年前から現在まで(生物の大型化と多様化が進んだ顕生代に当たる期間)において、同規模の地球の環はオルドビス紀の1回しか発生しなかったと考えています。