約4億6600万年前の地球に「環」があった可能性 史上2番目の大量絶滅の原因?
■赤道付近に集中するクレーターは環の証拠な可能性がある
3氏は、クレーターの分布が、環が存在した証拠になるのではないかと考え、研究を行いました。力学的な性質から、環は赤道付近に存在します。環から少しずつ天体が落下して地表に衝突した場合、クレーターは赤道付近に集中するはずです。通常、天体が地球に衝突する地点にはほぼ偏りがないと考えられているため、赤道に集中することはないはずです。 3氏は、オルドビス紀衝突スパイクの頃に形成されたと考えられる数十のクレーターのうち、浸食や地殻変動などの影響が比較的少なく、年代がはっきりしている21個のクレーターについて、大陸移動を考慮したオルドビス紀当時の分布を調べました。その結果、ほとんどのクレーターが緯度にして赤道から30度の範囲内に収まり、最も離れている物でも南緯39度にあることが分かりました。 小惑星帯からやってきた別々の天体による衝突が、今回のように赤道付近に集中する偶然が起こる確率は約2500万分の1以下であると推定されます。この時代の地層から見つかる隕石の破片の成分はほぼ1種類の組成に限定されることも考えると、オルドビス紀衝突スパイクは別々の天体衝突ではなく、1つの天体がロシュ限界に達して砕かれ、一時的に環となったものが落下した可能性があると3氏は考えています。 今回の研究では、地球は約4億6600万年前から4000万年間、地表から1万5800km未満の高さにある環を持っていたことを示唆します。環の素となった天体は、隙間のない塊の天体の場合は直径10.5km以上、隙間の多いラブルパイル天体の場合は直径12.5km以上の大きさがあったと推定されます。 なお後述する通り、この時代には大規模な寒冷化が起こり、赤道付近まで氷床が発達していたと考えられています。氷床は融けてなくなってしまうため、氷床への天体衝突は後の時代に痕跡を残さない可能性もあります。しかし3氏は、氷床が発達する前の時代に形成されたクレーターもあること、氷床が発達していた可能性のある地域のクレーターもよく保存されていることを考えると、氷床はクレーターの形成にあまり影響を及ぼさなかったと考えています。