『光る君へ』で「曲水の宴」が再現。公卿たちが流れる水を前に杯を交わして歌を詠む、風雅な催し
◆困難を極めた美しい水流作り 水に流す羽しょうのデザインは、京都の鴨川にあやかって「鴨」がモチーフ。その鮮やかな色彩は、古来から高貴な色とされる繧げん彩色を取り入れた。実物の素材は木材だが、林先生の色を元に美術チームが発砲スチロールに彩色。水に溶けない絵の具を使用した。 美術チームは、事前に別のスタジオで遣水の模擬セットを組み、実験・検証を繰り返し、調整しながら本番に臨んだのである。 困難を極めたのが、S字の遣水に理想的な美しい流れを作ることだった。 「水は高い所から低い所に流れるのはあたりまえですが、遣水が曲がっているので、羽しょうが途中でクルクル回ったりするので苦労しました。羽しょうにモーターをつけて動かすの 改良が必要でした 」(NHK 映像デザイン部・山内浩幹チーフデザイナー) 。 私はこの取材の始めに、スタジオ内に遣水を作ると聞いたとたんに想像してしまった。水をどんどん流したら、スタジオの庭園は水浸しになり、水辺で和歌を作る役の俳優たちは、衣裳の裾を持ち上げて逃げなければならない。短時間に撮影しなければ、風雅な宴が台無しになるのではないかと。この私の愚かな想像は打ち消された。 流れの最終地点で、水をポンプで吸い上げる仕組みを造っていたのだ。 少しの落ち度も許されない、スタジオ内での曲水の宴。『光る君へ』のドラマの展開の裏で、美術チームのセット造りのドラマがあることを学んだ。
しろぼしマーサ
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